「攻殻機動隊」の世界は現実化するのか?神山健治、冲方丁らが激論!
「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズの神山健治監督、「攻殻機動隊ARISE」シリーズの脚本を担当した小説家の冲方丁が11日、都内で行われた「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT The AWARD」シンポジウムに来場、「2029年攻殻機動隊の世界観」をテーマに、「攻殻機動隊」の世界が実現するのかについて議論しあった。
神山、冲方と共に、日本を代表する大学の研究開発者が「攻殻機動隊」の世界の現実化について語り合った本シンポジウム。「攻殻機動隊」に登場する「義体」と呼ばれるサイボーグ技術などについて、パネリストで参加した産業技術総合研究所の梶田秀司氏は「僕の目から見ると『攻殻機動隊』の世界は夢のようなテクノロジーだが、現実は追いついていない。福島の原発事故に今の技術では対応できなかったですから」とコメント。さらに日本の人型ロボットの技術水準については「ある意味で先端にいっていたものが、外国の追い上げをくらって、追い抜かれたというのが現状です。アメリカとヨーロッパ、それから韓国の研究者は頑張っていて。非常にいい研究をしていますから」と解説した。
続けて「今まではパワーアップした腕を描こうと思ったとしても、実生活で差別の対象にならないだろうかという道徳観みたいなところから、人間にそっくりにした方がいいと思っていた」と切り出した神山監督は、「しかし最近は3Dプリンターで作った義手がかっこいいという発想が出てきた。そこに現実との物語の差を感じますね」とコメント。その上で、「人間性を大事にしていくのか、それを放棄した上で進歩を取るのか、ということが、次にSF作品を作る上で僕らが考えることになるのかな。僕らは道徳観が最終的な立脚点としてあれば、科学の進歩が間違いないという考えで作品を作ってきたけど、すでにその先が来ているんじゃないかと。必ずしもヒューマニズムに立脚点をおかなくてもいいのかもしれない、という時代が来ている」と指摘。冲方も「テクノロジーが倫理を追い越すか否かということは興味深い」と興味を抱いた様子だった。
その後も「電脳」をテーマに「人工知能(AI)技術が変える未来の教育システム」「高機能な義体を手に入れれば万人が超人になるのか」「才能はダウンロードできるか」「ロボットの権利」「サイバーセキュリティー」といった多様なテーマを語り合ったパネリストたち。刺激的な話の数々に、観客も興味深くその話に耳を傾けていた。(取材・文:壬生智裕)