オスカー俳優エディ・レッドメインが感じる「引け目」…徹底した役づくりの裏にあるもの
映画『リリーのすべて』で世界初の性別適合手術を受けたデンマーク人画家という難役を演じ切ったエディ・レッドメインが来日し、自身の役づくりについて語った。
『博士と彼女のセオリー』のスティーヴン・ホーキング博士役でアカデミー賞主演男優賞に輝き、『リリーのすべて』のリリー・エルベ役でも2年連続となる同賞ノミネートを果たしたエディ。ここ数年で演技派俳優としての地位を確固たるものにしたが、多くの英国人俳優が演劇学校でトレーニングを積んでいるのに対し、自身はそうした学校に通っていないことに引け目を感じているという(エディはケンブリッジ大学卒:美術史専攻)。
役づくりのプロセスについて聞かれたエディは「ちょっと引け目を感じているんだ。僕は演劇学校にいっていないし、役づくりのプロセスというものも持っていないから。演劇学校がそうしたことをやるのかもわからないけど……」と打ち明けると、「全ての役を違ったことを学べる機会と見なしている。願わくば、ずっと経験し続けることができたらいいな」とその代わりとばかりに全ての仕事から新たなことを吸収しようと全力を尽くしていると語る。
男性として生きてきたものの、押し込められてきた女性としての本来の自分に気付き、命の危険を冒してでも自分らしく生きようとしたリリーを描く本作では、撮影開始の4年前に参加が決まるやトランスジェンダーについての本を読み漁り、まる1年は準備に専念。リリーの妻で芸術家のゲルダの絵(リリーをモデルにしたもの)やリリーの写真を見て、リリーの日記を基にした回顧録「Man into Woman」を読み込み、さまざまな世代のトランスジェンダーの女性たちに会って彼女たちが真の自分になるまでの道程を聞いたという。
「トランスジェンダーの女性たちは、性別適合の初期の段階をHyper-Feminization(過度な女性化)と呼んでいた。過度にフェミニンな服を着て、たくさんメイクをして……ある女性は自分自身を探すため、いろいろ試してみているティーンの少女みたいな期間と言っていた。また、ある人は、いつでもリュックを片方の肩にかけていたと教えてくれた。片方の肩だけに重さをかけることで、体の曲線を出し、女性らしさを強調しようとしていたんだ」。そうした体験談をメイクアップ&ヘアデザイン、衣装デザインのスタッフやムーブメント・ディレクターと共有し、外見から内面、そして些細な動作からリリーという一人の女性が辿る旅路を見事に表現した。
先の「役づくりのプロセス」の質問について、少し考えてから「ただ自分を役の全ての要素に没入させようとしている」と口にしたエディは、「できる限り多くの情報で装備して、全ての下準備をして、自分とは違って素晴らしい人と一緒に演技をする。そうしたらその下準備のことは忘れて、ただ真実を演じようとしているんだ」とどこまでも謙虚に俳優という仕事に向き合っていた。(編集部・市川遥)
映画『リリーのすべて』は3月18日より全国公開