声を失ったピンク四天王・佐野和宏18年ぶりの監督作に笑顔!仲間たちも再始動を祝福
1990年代にピンク四天王の1人として異彩を放った佐野和宏18年ぶりの監督作『バット・オンリー・ラヴ』の初日舞台あいさつが2日に新宿K's cinemaで行われ、円城ひとみ、蜷川みほ、芹澤りな、飯島洋一、寺脇研プロデューサーらが佐野監督の再始動を祝福した。
【動画】ピンク四天王18年ぶり監督作!『バット・オンリー・ラヴ』予告編
映画運動家として活動する寺脇が『戦争と一人の女』に続いてプロデュースした本作は、2011年に下咽頭がんで声帯を切除し、声を失った佐野自身を投影したドラマ。娘に血のつながりがないことを知った男が妻の不貞を疑い、激しく動揺する姿をエロチックに描き出している。普段、筆談でコミュニケーションを行っているという佐野は、持参したボードに言葉を書き、それを寺脇が代読するという形でこの日の舞台あいさつは行われた。
「久しぶりの作品で緊張しました」という佐野の言葉に、「本当かよ」と返すなど、気心知れた同士だからこそできる寺脇とのやりとりはまるで漫才のようで、会場は大盛り上がり。さらに舞台あいさつの途中からは川瀬陽太も合流。「(寡作で知られる映画監督の)テレンス・マリックばりに帰ってきたね。ばんざーい!」と喜びを爆発させた川瀬は「佐野さんとか、下元史朗さん、亡くなった伊藤猛なんかもそうだけど、そういった俳優が僕らの先にいてくれたおかげで飯を食えている。今まで佐野さんの映画に出ることがなかったので、出られてうれしいです」と笑顔を見せた。
佐野が「現場は絶好調だった」と自負する通り、妻役の円城が「現場でも佐野さんは元気なので、普段もそういえばしゃべれないんだっけと思うくらい苦労はなかったですね」と切り出せば、娘役の芹澤も「初めて佐野さんに会った時からわたしは娘でした。声が出なくても、佐野さんが何を伝えたいのかを知りたかった」と述懐。そんなキャスト陣のコメントを聞いていた佐野はボードを使わずに、声を振り絞るように「感謝しています」と謝辞を述べた。
その言葉に「魂の叫びが聞こえました」と返した寺脇は、「今日の日を迎えるまで18年。がんになってから、5年後の生存率は20%といわれています。あと3か月で5年ですから。ここまで来たら生きのびると思います。佐野は毎日劇場にいますんで、生きているか確認しに来てください」ときわどくも、しかし愛情あふれるジョークで会場を沸かせた。(取材・文:壬生智裕)
映画『バット・オンリー・ラヴ』は新宿K's cinemaにて公開中