なぜ麻薬戦争にひかれるのか?ベニチオ・デル・トロ、終わりなき戦いを語る
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の重厚なアクションサスペンス『ボーダーライン』に出演したベニチオ・デル・トロが、本作への思いやドラッグ戦争への見解、さらに出演が発表されたばかりの『スター・ウォーズ/エピソード8(仮題)』について語った。
『トラフィック』や『エスコバル/楽園の掟』、そして本作と、ドラッグ戦争を題材にした作品に縁が深いベニチオ。このテーマにひかれる理由を聞くと、こんな答えが。「多くの映画が、現実世界からアイデアを借りている。『ボーダーライン』はフィクションだけど、現実世界で実際に起こっていることがモチーフで、リアルなんだ。この三本はそれだけではなく、“人間のあり方”についても多くを考えさせてくれるんだよ」。
中でも『ボーダーライン』は、ハリウッドの典型的なアクション映画とは本質的に構造が異なる作風が画期的。初めて脚本を読んだ時の印象について「独創的ですごく気に入ったよ。これはとても重要なことだ」と語ったベニチオは、さらに「監督がドゥニという点も出演したかった理由の一つ。エミリー・ブラントやジョシュ・ブローリンといった人たちのおかげで映画の一部になるのが簡単だったし。撮影監督は今の映画界を代表する名手ロジャー・ディーキンスだしね」とチームの重要性をたたえた。
主演エミリーのタフな熱演も印象的な作品だが、彼女はこの映画に何を持ち込んだのだろうか? ベニチオは「女性的な強さだ。魅力的でリアルな素晴らしいキャラクターを体現したと思う。彼女は撮影の合間は生き生きとしていたね。いつも笑っていて、素晴らしいユーモアのセンスを持った愉快な女性だったよ」と美しき共演者を称賛した。
また混迷を極める深刻な社会問題である、終わりなきドラッグ戦争についての私見を尋ねると「ワオ、これは大きな質問だね(笑)。戦略を再評価するべきだ。アメリカとメキシコの政府が力を合わせて、常に最新情報を交換する必要がある。相手と同じ手段を用いて戦うべきではない。それでは問題の解決にならないから」と言葉を慎重に選びながら真摯(しんし)に語った。
最後に、これから撮影に入るという『スター・ウォーズ』について尋ねると「すごく興奮しているよ! 契約上、どんな役をやるかなど、多くは話せないんだけど。あのシリーズの一部になれて幸運だよ。ただ、大成功を収めたフランチャイズだからね。同時に恐ろしくもあるよ」と素直な気持ちを吐露した。同作でどんな勇姿を見せるのか、楽しみにしたい。(取材・文:小林真里)
映画『ボーダーライン』は4月9日より新宿ピカデリーほかにて全国公開