オスカー作品賞『スポットライト』に日本人撮影監督!その仕事ぶりとは?
今年のアカデミー賞で作品賞・脚本賞をW受賞した映画『スポットライト 世紀のスクープ』で撮影を担当したのは、2012年にはVariety誌の「注目すべき10人の撮影監督」に選ばれ、ジェニファー・ローレンス出演の『世界にひとつのプレイブック』やジョニー・デップ主演の『ブラック・スキャンダル』などそうそうたる作品を手掛けてきた日本人撮影監督マサノブ・タカヤナギだ。『スポットライト』のトム・マッカーシー監督が取材に応じ、タカヤナギとのコラボレーションについて語った。
神父による児童への性的虐待をカトリック教会が組織ぐるみで隠ぺいしてきたという衝撃のスキャンダルを暴き、ピューリッツァー賞に輝いたボストン・グローブ紙の調査報道チームの執念を活写した本作。タカヤナギの飾り建てのない映像は、ひたむきに真実を追い求める記者たちの姿そのものだ。
今回がタカヤナギとの初タッグとなったマッカーシー監督は「マサノブとはスカイプ経由で初めて会って、一緒にこの作品を作ろうってことになった。その後は電話で話したり、一緒にボストンに行ったりしたんだ。各シーンをしっかり理解しようと、二人で何日も何日もかけて脚本を分析したよ。シーンの核心がどこにあるのか、そのシーンにビジュアル的にどうアプローチしたいかということをまず明確に理解できないと、どういう撮影をするべきかが見えてこない」と二人で脚本を事細かにひもとくことから始めたと明かす。
マッカーシー監督は本作の脚本も執筆しているだけに「もちろんいろいろと自分の考えはあったよ」と執筆中から撮影方法について思い描くこともあったというが、「自分の考えにしがみつくのは良くないと思うんだ」ときっぱり。「素材がうまく描かれるように手引きしてほしいから、優秀な撮影監督を雇うんだ。だから最初から自分自身でいろんなアイデアを持っているのは得策じゃない。撮影監督の意見を聞きながら、協力してやっていきたいんだ」。
「それに撮影の当日にも、マサが新しいアイデアを出してくることだって頻繁にあったよ」と振り返るマッカーシー監督。「部屋に閉じこもって脚本とにらめっこしても、やっぱり実際に俳優や他の全てを準備したセットでいざ撮影してみると、違うものが見えてくることがあるんだ。現場では思っていたのとは違うエネルギーを感じたり、リハーサルを観てみると感情に訴えるところが違っていたりする。だからフレキシブルに対応できることが重要だね」。そうしてマッカーシー監督とタカヤナギのコラボにより完成した映像は、マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムスらの名演にしっかりと寄り添い、スリリングなドラマを雄弁に物語っている。(編集部・市川遥)
映画『スポットライト 世紀のスクープ』は4月15日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国公開