アメリカで活躍するアジア系ラッパーたちが明かす現状とは? トライベッカ映画祭
第15回トライベッカ映画祭で上映された新作『バッド・ラップ(原題) / Bad Rap』について、ラッパーのダムファウンデッド、アクアフィーナ、レックシティージー、ジャーナリストのジェエキ・チョー、サリーマ・コロマ監督が、4月16日(現地時間)にニューヨークのスミス・ホテルで行われた取材で語った。
本作は、まだ知名度の低いアジア系アメリカ人ラッパーたちの現状を厳しい目で見つめながら、彼らが世間に注目されるためにいかに戦略を立てていくかを描いた作品。
製作過程について「ジェエキが彼らアーティストを紹介してくれたの。最初、2か月ほどさまざまなラッパーたちを追いかけてから、最終的に今作に登場したラッパーたちに決めたわ。そのうちの数人はもともと友人だったけれど、彼らはそれぞれ自分の道を突き進んでいるラッパーでもあるの」とサリーマが答えた。
もし、レコードレーベル会社に自分(アジア系ラッパー)を売り込むなら、どのようなやり方で売り込んでいくのか。「確かにアジアのテイストを売りにするのも良いが、最終的にはラップで勝負しなければいけない。なぜなら、ソーシャルメディアでの評価などから僕らを売りに出せるが、レコードレーベル相手だと、そういうものだけでは彼らを惹(ひ)きつけることはできない。映画内でも描かれているが、僕らアジア系ラッパーの音楽が悪いわけではない。ただ、レコードレーベルは僕らを売るビジョンをまだ持っていない気がする。でもこれはアジア系ラッパーだけでなく、全てのアーティストに言えることで、自分の個性を見つけて、売り込んでいかなければならない」とダムファウンデッドが困難な点を指摘すると、ジェエキは「僕がヒップホップのXXL誌で編集者だった時に、アジア系ヒップホップグループ Far East Movement を編集長に紹介し、当時Facebookではおよそ12万もの人たちがこのグループを“お気に入り”として支持していたのに、彼らを取り上げてもらえず、何度も却下されたことがあった。最終的に、彼らの楽曲『Like A G6』がヒットするまで、同雑誌では扱わなかった」と現実を明かした。
影響を受けた音楽についてレックシティージーは「僕は日本のアニメ主題歌やフランスのポップスを聴いていた」と答え、一方、アクアフィーナは「わたしは高校でトランペットを吹いていたから、チェット・ベイカーを聴いていて、アンダーグラウンドの音楽からヒップホップの世界に興味を持ち、カニエ・ウェストや JAY Z とは異なったラッパーのネクロにハマったわ」と答えた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)