竜星涼、暴力・狂気・絶望に満ちた問題作の裏側「自分自身も追い込まれていった」
小幡文生のベストセラー漫画が原作の映画『シマウマ』で主演を務めた竜星涼が、あまりに暴力的な問題作に挑んだ心境や撮影裏を明かした。撮影期間中、竜星は自分自身が追い詰められるほどに役に入り込んでいたという。
主人公の竜夫(竜星)は、とあることから裏社会に転落。依頼者が抱く恨みや憎しみをあらゆる暴力で晴らす“回収屋”のドラとしての人生が始まる。赤の他人を自らの手で死よりむごい絶望に追いやり、“回収”を繰り返すドラは、決して後戻りできない闇の奥底へ突き進んでいく。
特撮ドラマ「獣電戦隊キョウリュウジャー」(2013)で注目され、昨年には人気漫画を実写化した話題作『orange-オレンジ-』で主演の土屋太鳳、山崎賢人に続く役どころを演じ、目覚ましい活躍を見せる竜星。本作は序盤からドラが素手で人を殴り殺すシーンがあるなど、これまでにない狂気に満ちたストーリーだが、竜星は「僕にとってこの作品がいい転機であり、自分のイメージを変える大きなチャンスだと思いました」と意欲的に取り組んだ。
約2週間のタイトな撮影期間、ドラが闇にはまり込んでいくと同時に「自分自身も追い込まれていった」と明かす。「ずっと血だらけで、やりもやられもした。すごい世界にいるなと。自分が本当に恨みを持つ相手にそれをぶつけるのはわかるけれど、そうでない人間を制裁していくというのを演じるのは、すごく嫌な気持ちになりました」と精神的に追い詰められ、「私生活の記憶はあまりない。それくらいこの作品に没頭していた」と振り返る。
竜星が目指したのは原作が描く世界観。「漫画自体が人気ということは、その作品性をおもしろいと思う人がそれだけいるということ。だからその世界観を映画でも出せたら、そして中途半端でないものをやれば、おもしろいと思ってくれる人は必ずいる」と熱心に語る。残忍な描写の多い物語についても「作風としては大好き。映画や漫画だけの世界だからこそ奮い立たされる、男として刺激を感じるというのがある」と挑戦してみたい気持ちが強かったそう。
しかし、「自分がやりたいというのと、実際やってみたというのとでは違いました。難しかったというのが本音ですね」と吐露。「見ている分にはやりたいと思う気持ちはありましたが、それを自分が演じセリフを言うってなると……」と現実離れした世界観を理解し表現するのには苦戦したという。だが、劇中の姿はそれを微塵も感じさせない。竜星演じるドラが、血にまみれて殴り殴られ、悪に染まりながらも己をむき出しにするさまを見れば、ハマリ役と思わずにいられないだろう。苦労を明かしながらも竜星は、撮影を通じ「得たものはすごく大きかった」と充実の表情を見せる。「こういう竜星涼があるというのをまずみんなに観てもらえるというのが僕の役者人生の中で大きなターニングポイントです」と先も見据えつつ、仕上がりに自信をのぞかせた。(編集部・小山美咲)
映画『シマウマ』は5月21日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開