インドの天才数学者ラマヌジャンを描いた秀作とは?
映画『運命の逆転』でオスカーを受賞したジェレミー・アイアンズと、映画『スラムドッグ$ミリオネア』のデヴ・パテルがタッグを組んだ話題作『ザ・マン・フー・ニュー・インフィニティ(原題) / The Man Who Knew Infinity』について、4月28日(現地時間)にニューヨークで行われた電話インタビューでマシュー・ブラウン監督が語った。
本作は、南インドの貧しい家庭出身のラマヌジャン(デヴ)が、極めて優れた直感からさまざまな数学の定理を発見し、その成果を認めたケンブリッジ大学の数学者G・H・ハーディ(ジェレミー)がラマヌジャンをケンブリッジ大学に招いたことで、思いがけない友情が生まれていくというドラマ。作家ロバート・カニーゲルの評伝『無限の天才-夭逝の数学者・ラマヌジャン』をブラウン監督が映画化した。
製作経緯は「12年前にロバートの原作に出会ったが、原作には数学よりも、ラマヌジャンに起こる(英国での)出来事を通しての彼の人間性や、数学者ハーディとのギャップ(階級の差)が記されていた。だから数学の見地から入っていないが、(製作を通して)最終的には数学は純粋なアート形態だと敬意を表することができた。ミュージシャンが音楽に情熱を持つように、数学者の情熱も理解できたよ」と認識を深めたようだ。
ラマヌジャンはインドのマドラス(現チェンナイ)の大学を落第している。「彼は2つの大学で落第している。なぜ彼が落第したかというと、在学中に数学だけに夢中になり、他の科目の勉強を怠っていたからだ。彼が大学で学士号を取得しなかったことは、今よりも当時の方が(その後、ケンブリッジ大学の教授らと接するうえで)大きな問題で、それが(ハーディと出会うまで)彼を数学だけの世界に孤立させる形になった」と語った。
ラマヌジャンとハーディの関係について「ハーディが、ラマヌジャンの定理に関して彼の直感を信じ、数学的な証明を押し付けなかったことが重要だ。もしラマヌジャンがもう5年長く生きていたら、より多くの定理をハーディのもと発見していただろう。ラマヌジャンの定理と業績は、今日でも理解しようとする人がたくさんいる。彼が長生きしなかったためより多くの定理を発見できなかったことは、ある意味悲劇だ。ハーディは、2、3世紀分の新たな数学の定理の発見をしたことを理解していないラマヌジャンに付いていく必要があり、大変だったはずだ」と語った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)