ウディ・アレン、有名人は有名税に不満を言うが実際メリットの方が大きい
第69回カンヌ国際映画祭
現地時間11日、第69回カンヌ国際映画祭でオープニング作品『カフェ・ソサエティ(原題) / Cafe Society』(アウト・オブ・コンペティション部門)の会見が行われ、ウディ・アレン監督、主演のジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワートらが出席した。
本作は、自らの運を試そうと、有力エージェントのおじ(スティーヴ・カレル)が居るハリウッドに出てきて働き始める青年ボビー(ジェシー)の姿を追ったロマンチックコメディー。すぐにおじの秘書ボニー(クリステン)に恋するが、彼女には恋人が居て……。1930年代の華やかなハリウッドが空虚さとともに描かれている。
作品にちなんで“有名であること”について聞かれたアレン監督は「それについて言えば、いいことも悪いこともある。何年もスポットライトの下にいた僕の意見は、有名であることの特典は、その悪い部分よりずっと大きいということ」ときっぱり。「有名人たちはよく、プライバシーがなくパパラッチに追い回されることに不満を言うけれど、それは生命を脅かす問題というわけじゃない。人生を生きる上で、彼らはずっとアドバンテージを得ている」と持論を展開した。
ジェシーは、不器用な青年から人生に幻滅した大人の男性へと変わっていく主人公ボビーを魅力的かつ説得力を持って演じている。アレン監督は「ずっと昔だったら、ジェシーの役柄を僕が演じたかもしれない。でも僕は俳優ではなくてコメディアンだから、キャラクターの一つの面しか見せられなかっただろうと思う。ジェシーはいい俳優だから、もっと複雑で面白く演じてくれた。みんなはジェシーは僕みたい、このキャラクターは僕みたいと思うみたいだけど、僕が言えるのは、僕がやるよりもジェシーはもっと深く演じているということ」とジェシーの仕事ぶりを絶賛した。
今回ナレーションをアレン監督自ら務めたのは、本作を「小説のような構造にしたい」というアイデアがあったからだという。「小説のように、主人公の両親、兄弟などを紹介していきたかった。小説には著者の声があり、僕はこの映画の著者なわけだから自分でナレーションをした。やってくれる人を探そうかとも思ったけど、僕が書いたわけだし、自分でやった方が安く済むから」とさらりと続けて笑わせた。
また、本作は初タッグとなる『地獄の黙示録』など3度のオスカーに輝く撮影監督ヴィットリオ・ストラーロと共に初めてデジタルで撮影した。フィルムとデジタルの違いはなく「全く同じ」で、「デジタルといったって、そこにあるのは同じエモーションだし、妥協も変更もない」とアレン監督が言い切る通り、スクリーンに映し出されるハリウッドはチャーミングで圧倒的に美しかった。(編集部・市川遥)
第69回カンヌ国際映画祭は現地時間5月22日まで開催