アカデミー賞ノミネートの堤大介監督、日本とCGアニメの新しい流れを作りたい!
ロバート・コンドウとの共同監督作『ダム・キーパー』が、第87回アカデミー賞短編アニメ賞にノミネートされたアニメーション監督の堤大介が5日、開催中の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2016(SSFF&ASIA)」で行われた新作短編アニメ『ムーム』の上映会&トークイベントに出席、『ムーム』の製作秘話や日本のアニメーションに対する思いを明らかにした。
『トイ・ストーリー3』『モンスターズ・ユニバーシティ』のアートディレクターとして、米ピクサーに約7年間在籍した堤監督。『ダム・キーパー』の成功後、2014年7月にピクサーを離れ、ロバート監督とスタジオ「トンコハウス」を設立。『ムーム』は「トンコハウス」からの待望の新作となる。
「『ムーム』には絵本原作があるのですが、お話をいただいた当初は一度お断りしたんです」と話し始めた堤監督。その理由は、「僕らは『ファインディング・ニモ』のアンドリュー・スタントン監督が、我が子への愛という個人的な問題と作品で向き合い、世界的成功につながったのを製作の理想と考えるところがあって、僕らの物語でない『ムーム』とどう向き合うかわからなかった」からだという。「でもロバートが、3歳の時にお祖母さんを亡くし、悲しいという気持ちもわからないまま喪失感を経験したという話をしてくれて、『ムーム』のテーマが、僕らのパーソナルな経験とつながったんです」と製作の裏側を明かした。
続けて堤監督は、「『ムーム』では日本のCGクリエーターと仕事をするという目標が実現できました。『ダム・キーパー』は油絵タッチの手描きでしたが、やはり僕らはCGアニメが一番得意。日本のアニメーターは、手描きは世界最高ですが、CGアニメはその分、少し遅れているところがあって、これから上を目指そうとハングリーで意欲ある人たちと協同して、ピクサーで学んだ僕らと合わさったら、きっと新しくて面白いものができると思ったんです。実際、様々な意見交換ができました」と自信を見せた。
フル3DCGの『ムーム』は、川村元気(作)と益子悠紀(絵)による同名絵本を原作に、マーザ・アニメーションプラネットら日本人スタッフを中心に制作が進められた。湖に捨てられたガラクタに詰まった持ち主との思い出を引っ張り出し、空に返すのがムームの役割だが、ある日、ムームはガラクタの中で、泣き顔のルミンと出会い……。トンコハウスでは現在、長編版『ダム・キーパー』も制作中だ。(取材/岸田智)
「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2016(SSFF&ASIA)」は6月26日まで、東京は表参道ヒルズ スペース オー、ラフォーレミュージアム原宿、他3会場、横浜はブリリア ショートショート シアターで開催