こんな演技じゃ張り合えない…波瑠の女優人生を変えた作品
映画『それいけ!アンパンマン おもちゃの星のナンダとルンダ』で、念願のアニメ映画声優デビューを果たした女優の波瑠。「不安もあったけれど思いっきりやり切った」と語るその表情には一点の曇りもない。NHK連続テレビ小説「あさが来た」(以下、朝ドラ)では、様々な重圧から「女優をやめたい」と追い込まれた時期もあったという波瑠が、いかにして試練を乗り越え、そして成長していったのか、その心境の変化を真摯(しんし)に語った。
劇場版アンパンマンシリーズの第28作となる本作は、おもちゃの星からやってきたワガママなお姫様ルンダ(波瑠)が、アンパンマンたちと共に大冒険を繰り広げるアドベンチャードラマ。物心がつく前からアンパンマンのビデオが家にあり、自然に親しんでいたという波瑠は、「自分がアニメの世界に入って、アンパンマンやばいきんまんたちと話をしていることが夢のようだった」と大きな目を輝かせる。
朝ドラのヒロインを務めたことによって、今回のアニメ声優はもとより、女優として確実にチャレンジの場が広がった波瑠だが、本気で芝居に取り組もうと決意したのは、今から7年前にさかのぼる。「『女の子ものがたり』という映画ですごく悔しい思いをして。こんな演技じゃ同年代の子と張り合えないことを痛感し、自分の課題がはっきり見えた」と当時を振り返る。
そして、地道に努力を積み重ね、4度目のオーデションでようやくつかんだ朝ドラのヒロイン。「ここにたどり着くまでは、何かはわからないけれど、何かしらに向かっている……今の状態ではない何かにならなければと、必死にもがいていた」と言葉に力が入る。だが、またしても大きな試練が波瑠を待ち受けていた。
長期間の撮影、大勢の現場の中で感じた不安や孤独、そして押し寄せる“朝ドラヒロイン”というプレッシャー。「確かに苦しい時期はありましたが、『きちんとゴールを迎えられた』という達成感があったので、それはちゃんと認めてあげたいなと思いました」と気持ちを立て直し、さらに「作品と向き合うだけでなく、現場をもっと楽しむことも大切なことなんだと気付かされた」と述懐。全ては貴重な経験になったと笑顔を見せる。
誰かのために頑張る愛と勇気のアンパンマン。「わたしも事務所の方々に守られ、時には叱られ、大切にされているので、『これを壊すわけにはいかない』って思うと頑張れる。たぶん、自分のためだけだったら、逆にどうでもいいやって思っていたかもしれませんね」と吐露。そんな波瑠の座右の銘は“一視同仁(いっしどうじん)”。「全てを平等に慈しみ、差別しない、という意味なんですが、これもある意味『勇気』がないとなかなかできないこと。そう考えるとアンパンマンってやっぱりすごいなぁって思いますね」とあらためて敬意を表していた。(取材・文・写真:坂田正樹)
映画『それいけ!アンパンマン おもちゃの星のナンダとルンダ』は7月2日より全国公開