細田守監督、新作の第1稿はまもなく完成!「今までとは全然違う」
映画『バケモノの子』『おおかみこどもの雨と雪』の細田守監督が9日、早稲田大学で開講されている講座「映画のすべて マスターズ・オブ・シネマ」に出席し、現在制作中であるという新作について語った。
映画関係者をゲスト講師として招聘(しょうへい)し、映画・映像制作のプロセスを学びながら、映画人に直接質問などもできる本講座。この日、聞き役を務めた是枝裕和監督(基幹理工学部教授)から近況を尋ねられた細田監督は「今現在はおかげさまで次の作品を作ることができることになりそう。ちょうど今は脚本を書いていて、だいたい第1稿ができつつあるところです」と明かし、「今までとは全然違う面白そうな切り口を見つけることができたので、またいい意味で裏切って、面白いと言わせたいと思います」と期待をあおった。
学生たちから、細田監督作には動物が登場することが多い理由を聞かれると、「僕は動物というのがアニメの王道だと考えています。アメリカでは、動物を動かす技術がCGになっても継承されているから動物を主人公にしたアニメが多いんですが、日本では動物をモチーフにしたアニメは少ない。それは動物を描けるアニメーターが少ないからです」と細田監督。
「やっぱり僕らが目指しているものは『白蛇伝』(1958)などの東映長編なんですよ。例えば失われた技術の一つとして美術があります。その一部はスタジオジブリの美術部に継承されましたが、それも全てではない。今はどうしても観客が同じ物を求めているだろうと勘違いして、表現を狭めているし、技術が失われてきている」と指摘し、「そういう現状にちょっとでも抗いたくて。だから動物を描いたりするんです」と強い思いを明かした。
是枝監督が「映画を観た人が、人間が嫌になってしまうようなものは作るまいと思ってやってきた。もちろんそういう表現はあっていいんだけど、自分が作るものはそうではない。世界に対する肯定感というか、それが細田さんの作品にシンパシーを感じる理由でもある」と分析すると、細田監督は「倫理観、肯定感というと、きれいごと、うすっぺらいものだと批判を受けがちですけど、そういうところに耐えていかないといけないとも思う」と付け加える。
さらに「物作りとは、自分の意志とか作りたいという思いだけではなく、いろんなものに一種の制約を受けるもの。時には自分で課した倫理観からも制約を受けるわけだけど、そこから頑張って新しい表現をひねり出していきたいなと思うんですよね」と続けた細田監督。どんな新しい作品が生まれるのか、楽しみに待ちたい。(取材・文:壬生智裕)
この日の詳細は8月20日発売の「switch」9月号に掲載予定