“サッカーの神様”ペレ、ワールドカップ決勝で先制点とられても平静だった理由とは?
ブラジルが誇る伝説のサッカー選手、ペレを描いた伝記映画『ペレ 伝説の誕生』(日本公開中)について、ジェフ&マイケル・ジンバリスト共同監督が、4月22日(現地時間)にニューヨークのリージェンシー・ホテルで行われた取材で語った。
ブラジルのスラム街育ちのサッカー少年ペレは、1950年のFIFAワールドカップのブラジル大会で、ウルグアイに敗れ優勝を逃した「マラカナンの悲劇」を目撃し、父親にブラジルをワールドカップで優勝させると決意表明した。そして彼は、1958年のワールドカップスウェーデン大会に挑んでいく。2人の新星レオナルド・リマ・カヴァーリョとケヴィン・ヂ・パウラが9歳と17歳のペレを演じた。
ブラジルがワールドカップスウェーデン大会で優勝した時には、まだ誕生していなかったジェフとマイケルが、ペレを題材にした映画を描いたのは「まず、僕らにとって奇跡的だったのは、靴磨きをしていた少年が、不利な条件を取り払い、スポーツ界の伝説的な人物、さらに文化的にも模範的な人物となったあの信じられないペレの真実が、これまで映画化されていなかったことだ。アメリカでもサッカーの人気が上昇し、オリンピックも行われる今年に、このような機会が僕らに与えられた。素晴らしい人物であるペレと仕事ができて、とても感謝している」とマイケルが明かした。
ペレと話した内容についてジェフは「僕らが撮影を開始したのはロンドン五輪の頃で、ペレはそのクロージングナイトのセレモニーに参加するためにロンドンに来ていた。その時に、僕らは彼と1950年代はいかに『ジンガ』(ステップをつけたリズミカルな本来のブラジル選手の動き)スタイルが重要だったかを長い間話し合った。彼はスウェーデンとのワールドカップの決勝では、高い集中力で自分のゾーン(世界)に入り、全てがうまくいくような感覚があったらしい。そのため、最初にスウェーデンに先制点を取られた時も、平静を保って、自分をコントロールすることができたそうだ」と明かした。
ブラジル代表選手を描くことについてマイケルは「映画内で、ブラジル代表選手が困難を乗り越えて『ジンガ』スタイルを取り戻そうとする瞬間があって、そのシーンのために僕らは実際のプロのサッカー選手を雇った。彼らはリフティングでボールを地に落とさず、ずっと続けられるような選手たちだった。だがその日、ペレが撮影現場を訪れると、誰もがボールを急に地に落としてしまうくらい緊張していたことがあった」と振り返った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)