自分は美しい?イエスと答えたエル・ファニングの戦慄ホラー
6月25日(現地時間)、『ザ・ネオン・デーモン(原題) / The Neon Demon』封切り2日目の夜に、映画の舞台ともなったL.A.のハリウッドを代表する映画館アークライト・シネマで、監督ニコラス・ウィンディング・レフンと主演エル・ファニングが登壇しQ&Aを開催、製作の動機や映画に込めた興味深いテーマについて語った。
本作はファッションモデル業界を舞台にしたホラー映画。L.A.に出てきたばかりの16歳の新人モデル・ジェシー(エル)は、その圧倒的な美貌からすぐにデザイナーから指名を受けるなど頭角をあらわすが、彼女に仕事を奪われたほかのモデルたちはジェシーに対する復讐を開始して……。
製作のきっかけについて『ドライヴ』などのレフン監督は「ある朝目覚めた時、美についてのホラーを作ろうと決めた。僕の妻は本当に美しいけど、自分は美とは無縁だし」と苦笑。続けて「僕はすべての男性の心の中には16歳の女の子が住んでいると信じているから、自分の中の少女を描こうと思ったんだ」と意表を突く独特の発言をして、場内を沸かせた。
エルを主演に選んだ理由について「妻が推薦してくれたんだ。エルは当時16歳だったんだけど、初めて会ったとき16歳の女の子となにを話せばいいのかさっぱりわからなかった。一緒にミルクでも飲めばいいのか、アニメの話をすればいいのか悩んだ」と真剣な表情で話す監督。「別れ際、エルに『自分を美しいと思う?』と質問した。答えなかったので、『真剣な質問だ。美しいと思う?』と再度聞いたら『イエス』と答えた」と明かし、その瞬間にレフン監督は今作をエルの映画にしようと決意したという。
そんなエルは映画への出演について「以前からニック(レフン監督)の映画が大好きでいつか彼の作品に出演したいと思っていたの。でもティーンの女の子の映画を作る可能性なんてないだろうなって諦めていたら、この映画の話がきて驚いたわ! ファッションの世界を舞台に美を描くというから、ぜひ出演したいと思った」と振り返る。さらに「自己陶酔や美への執着。SNSなどのセルフィー・カルチャーとか……。今の私の世代を反映している」と分析していた。
現在18歳のエルの世代についてレフン監督は「デジタル革命の時代に生きているね。未来の、この次の世代はデジタル・ワールドに生きていることすら気づかないだろう。それが彼らにとっての現実だから。これは恐ろしいと同時に魅惑的でウットリさせられるよ」と告白。一方、エルは「映画の冒頭は美と死が融和している。血まみれだけど楽しそう。ある意味Instagram的。写真は命を持たないものだし、まるで死んだ写真みたいというか……。今は誰もが美をそういう風に捉えている。とても恐ろしいことね」と鋭い持論を展開していた。(取材・文:小林真里)