世界遺産の奈良・春日大社で奉納上映!観客全員で本殿参拝も
世界遺産に指定されている奈良の春日大社が第六十次式年造替(20年に一度執り行われる社殿の修築大事業)を行うことを記念して、写真家で映画監督の本橋成一監督のドキュメンタリー映画『アレクセイと泉』と、河瀬直美監督が撮り下ろした短編映画『輪廻』が20日に同所で奉納上映された。これは奈良県奈良市で開催された「なら国際映画祭2016」の一環として行われたもの。
この日は、なら国際映画祭エグゼクティブディレクターも務める河瀬監督が、三越伊勢丹とコラボして撮り下ろした短編映画『輪廻』を奉納上映。大いなる自然の循環に抱かれ、決して途絶えることのない生の循環を描き出した物語となる同作を上映した後に、会場にやってきた河瀬監督は、「わたしのポリシーとしては、なら国際映画祭は河瀬映画祭ではないので、自分の作品は映画祭では上映しないようにしようと決めていたんですけど、今回は特別。自分自身のピュアな思いを映像に捧げたつもりでございます」と奉納上映に対する思いを語った。
続けて『輪廻』の内容について、「春日の山をわたしは庭のように感じて生きてきたんですが、それを(映画の中で)俯瞰(ふかん)で空から観た時に、自分はすごい世界に生きているんだなと感じた次第です。このような素晴らしい場所にいて、自分の表現ができることを非常に幸せに思っています」と晴れやかな顔を見せた。
また、チェルノブイリ原発の爆発事故で被災した、ベラルーシ共和国東南部にある小さな村ブジシチェの中にありながら、放射能に汚染されていない不思議な泉について描き出したドキュメンタリー映画『アレクセイと泉』も上映された。「春日大社に行くということで、今日の映画と(前作の)『ナージャの村』のDVDとパンフレットを奉納します」とコメントした本橋監督は、春日大社の花山院宮司に映像を預けた。
上映中は、台風の影響であいにくの大雨となっていた奈良地方だが、上映終了後には雨もすっかりやんだため、観客全員で本殿への参拝と、釣灯籠への献灯を実施。おごそかな雰囲気の中で、世界平和、共存共栄への祈りを、参加者たち全員で捧げた。(取材・文:壬生智裕)