宮沢りえ、監督の返答次第では出演しなかった!?
自主製作映画『チチを撮りに』がベルリン国際映画祭に正式招待された中野量太監督の商業用長編デビュー作『湯を沸かすほどの熱い愛』で主人公の双葉を熱演している宮沢りえが、実は出演を断る可能性があったことを明かした。
本作が商業映画デビュー作に当たる中野監督。宮沢は、その点はまるで気にしていなかったという。それどころか、「周囲や友人が『次、何やるの?』といつも期待して待ってくれているので、商業映画を撮ったことがない監督の作品に出たら、みんなきっとびっくりするだろうなとワクワクする気持ちもありました。それにハードルが高い方がより挑んでみたい気持ちになります」と少女のようないたずらっぽい表情をのぞかせた。
むしろ、彼女が気にしたのは作品や監督のテイストだった。余命宣告された女性の終活を描いた作品だけに「カラッと描くのか。ウエットにするのか。そういうものは監督の好みになってくるので、これをカラッとドライに撮るんだったら、思いが共有できる。それなら、ぜひ参加させてもらおうと監督にお会いしたんです」と当時を振り返る。
さらに「監督に会ってみないとわからないと思いました。ほかの方なら、いままで作られた作品を観ることで多少なりともわかるけど、そうじゃなかったから。作品や脚本に対して、わたしは良い悪いって判断できないんです。でも、好きか嫌いかは言える。だから監督と話してみてよかったなと思いました」と世界観を共有できる監督だったから出演したという宮沢。
監督の挑戦だっただけでなく、彼女にも挑戦だった本作。宮沢の賢明な判断がなければ、この傑作は生まれていなかったと思うと、彼女の女優としての直感の鋭さに感心するばかりだ。(取材・文:高山亜紀)
映画『湯を沸かすほどの熱い愛』は全国公開中