野間口徹、脇役こそが生きがい!主役輝けば「映らなくてもいい」
映画『海賊とよばれた男』で岡田准一演じる主人公を陰で支える頭脳派店員を好演した俳優・野間口徹は、「主役を輝かせる立ち位置がとにかく楽しい」と言い切るほど、脇役に生きがいを感じているという。「親族代表」というコントユニットからキャリアをスタートさせ、「万が一、主役のオファーがきたら断るかも」とはにかむ野間口が、理想とする自身の俳優像について真摯(しんし)に語った。
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テレビ・映画・舞台とマルチに活躍する野間口は、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」や民放の人気ドラマで徐々に頭角を現し、近年は、本作や『シン・ゴジラ』『日本のいちばん長い日』などへの出演も相次ぐ売れっ子。「AKB48 SHOW!」(NHK BSプレミアム)ではアイドルを相手に爆笑コントを披露する多芸ぶりも発揮している。この勢いでいけば主役も夢ではないが、肝心の本人は、「主役はやりたくないんです。背負うものがあまりにも大きすぎて」と恐縮する。
「僕は前に出るより受ける方が好きなので。主役の演技を受けることで、その役者さんをもっと輝かせることができたら、こんなに楽しいことはない。目立ちたがり屋だったらとっくに芸人さんを目指しています」と吐露。さらに、「この(脇役としての)立ち位置は、『サラリーマンNEO』(NHK)でコントをやり始めてから、本気で考えるようになりました。主役の生瀬(勝久)さんや沢村(一樹)さんがもっと輝いてくれるのなら、僕は画面に映ってなくてもいいくらいだった」と述懐する。それでも主役のオファーが来たら? としつこく念を押すと、「スケジュールの問題以外で初めて仕事を断るかもしれません。万が一受けても共演者頼み。共演者に振り回される主役なら何とかなるかも?」と苦笑いを浮かべた。
本作は、百田尚樹(原作)、山崎貴(監督・脚本・VFX)、岡田(主演)という『永遠の0』チーム再集結によって製作された壮大な人間ドラマ。明治から昭和にかけて石油事業に尽力した国岡商店の店主・国岡鐡造(岡田)の波乱万丈の人生を、戦後の復興、そして世界市場を牛耳る石油会社との闘いを軸に活写する。
岡田とは10年来の付き合いになるそうだが、いまだに頭が上がらないという野間口。「僕を世の中に少し多めに出してくれたのが岡田くん。『SP』(フジテレビ)というテレビドラマで、彼の口添えから徐々に出番が増え、以降、何かにつけて気を遣ってくれる」と感謝しきりだ。今回は、店主・鐡造(岡田)を、大番頭の甲賀治作(小林薫)とともに創業当時から支える店員・柏井耕一役。3人でいることが多いため、なんとなく裏設定を決めていたというが、「小林さんが武闘派で、僕は頭脳派。岡田くんの暴走を僕が制止し、小林さんは黙って見守る。『このトライアングルのバランスがうまくできるといいね』と言っていたんですが、キャラ分けはうまくできたと思う」と自信をのぞかせた。
今後の目標を尋ねてみると、「舞台挨拶に出なくていい、ギリギリの番手でいること」とどこまでもブレない脇役魂。そんな野間口が「最近、重い役が続いたので、そろそろコメディーがやりたいですかね」と本音をポロリとこぼす瞬間があった。共演者の暴挙にアタフタしながらも大爆笑をとる主演・野間口徹。本人の意向とは裏腹に、そんな日が来ることを密かに待ちわびたい。(取材・文・写真:坂田正樹)
映画『海賊とよばれた男』は全国公開中