役者になる気はなかった…いま最も勢いのある女優・小松菜奈の本音
映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』で、とある重大な秘密を抱えたヒロイン・愛美を演じた小松菜奈。本作では難しい役どころを好演、話題作への出演が相次ぐ彼女だが、もともと女優になる気はなかったのだという。
小松は、モデルとしてティーンから絶大な支持を受ける一方、女優としての長編デビュー作『渇き。』で鮮烈な印象を残した。今年公開のものだけでも『ぼく明日』を含めた出演作は、『黒崎くんの言いなりになんてならない』『ヒーローマニア -生活-』『ディストラクション・ベイビーズ』『溺れるナイフ』と多数あり、さらにはハリウッド映画『沈黙 -サイレンス-』の公開も控える。
だが、もともと人前に出ることはおろか、話すことも苦手だったという小松。「絶対に女優としてはやっていかないだろうと思っていた」という彼女の女優への道を切り開いたのは『渇き。』そして同作のメガホンを取った中島哲也監督との出会いだった。
事務所の勧めで受けたオーディションで勝ち取った『渇き。』への出演。「大きな役だったために、演技も何も追いついていないまま、これを機に女優への道を進まなければならないムードになっていて……それが不安でした。だけど、監督は『女優にならなくてもいい。好きにすればいい』と言ってくれました。その言葉が自分を楽にしてくれました」と当時の複雑な思いを明かす。
その中島監督はオーディション時、小松の演技に笑っていたという。「できなさ過ぎて、とにかく恥ずかしかった。笑うほど下手だったんだと思います」と苦笑する小松だが、いま最も勢いがあると言っていいほどの女優へと成長した。
「いろいろな作品を重ねて、この仕事の面白さが次第にわかってきました。例えば、ピアニストの役ならピアノを練習するなど、自分が苦手と思っていたことにも挑戦し、その都度、自分の新しい面を開拓できるのはこの仕事ならでは。感情を作ることは簡単ではないし、つらいと思うこともあります。でも、一つの作品をみんなで作りあげることは何よりすてきで、みんなで一緒に分かち合う時間は本当に愛おしい。『ぼく明日』の現場でも、そう思う瞬間がありました」と心境の変化も語る。最後には「撮影が大好きなんです」と女優にはならないだろうと思っていた過去などまるでなかったかのように、顔をほころばせた。
七月隆文の小説を基に、『ホットロード』『アオハライド』などの三木孝浩監督がメガホンを取った本作。京都の美大生・高寿(福士蒼汰)は、通学途中、愛美(小松)という女性に出会い、瞬く間に心を奪われる。二人は付き合うことになり、交際は順調に進むが、愛美には思いも寄らない秘密があった……。(取材・文:高山亜紀)
映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』は公開中