小泉純一郎元首相、敗れてもくじけない 原発ゼロ実現に確信
元内閣総理大臣の小泉純一郎氏が16日、都内で行われた原発に代わるものとして期待されている自然・再生エネルギーの実情を伝える映画『日本と再生 光と風のギガワット作戦』の完成披露試写会に河合弘之監督、環境学者の飯田哲也氏と共に出席した。小泉氏は「原発ゼロ運動」を推進しているが「この映画を観て、あらためて原発ゼロは可能だと確信しました」と力強く語っていた。会場には細川護熙元首相、鳩山由紀夫元首相の姿もみられた。
本作は、弁護士として原発差し止め訴訟の先頭に立って活動していた河合監督が、ドキュメンタリー映画『日本と原発』シリーズを撮った後に寄せられた「原発をやめなければならないのはわかったが、やめたあとのエネルギーはどうするんだ?」という疑問に向き合った作品。世界各国で積極的に取り入れられている自然エネルギーの現状を紹介しつつ、「天候まかせの自然エネルギー」「値段が高い」「ドイツの脱原発、自然エネルギー推進はフランスから原発電気を買っているからインチキ」といった自然エネルギーにまつわる風評に対して、データをもとに丁寧に論破する内容となっている。
先の東京都知事選で「原発即ゼロ」の公約を掲げて出馬した細川元首相の応援にも立った小泉氏は「結果が出ず、『これでもう原発ゼロなんて言わないだろう』なんて言われていましたが、極寒にも関わらず、演説に立ったときに訪れてくれた人の熱気は忘れない。あれだけの人が支持してくれた。敗れても挫折してもくじけちゃいけないんだと思ったし、この映画を観て日本は自然エネルギーが発展していける国だと確信しました」と力強く宣言。
さらに「政府は原発ゼロを明言しませんが、2011年3月11日から現在までの約6年間、稼動ゼロの時期を含め、ほとんどの原発が稼動していません。その間、電力が足りなくて停電になったことはなかったでしょ? 原発なしでやっていけるということをこの国は証明しているんですよ」と続ける。
記者会見では新聞記者から、民進党が2030年代に脱・原発依存という政策を掲げていることについてどう思うか聞かれると「新潟県知事選で米山(隆一)さんが柏崎刈羽原発の再稼動に反対して当選したし、鹿児島県知事選でも三反園(訓)さんも当選した。必ず国政選挙でも“原発ゼロ”は争点になるのに」と持論を展開すると「野党が“原発ゼロ”で一本化すれば自民党にだって勝てますよ」と語った。
そんな小泉氏の意見に「(民進党の代表である)蓮舫さんに助言をしてみては?」という声が飛ぶと「“原発ゼロ”以外では政治にタッチしないことにしていて、できるだけ政治家には会わないようにしている」と現在のスタンスを述べ「安倍(晋三)総理に言ったって聞かないんだから、野党の党首に会ってもしょうがないでしょ」と発言し会場を笑わせていた。
河合監督は、本作を製作した意義について「風力発電や、太陽光発電など自然エネルギーの素晴らしさを一般の国民に広く知ってもらいたいのはもちろんですが、この映画を経済界の人に観てもらいたいんです。経済界の大物ほど自然エネルギーをバカにしている人が多いのですが、ものすごく近代的で経済効果も原発の比ではないことをわかってほしい」と訴えかけていた。(磯部正和)
映画『日本と再生 光と風のギガワット作戦』は2月25日よりユーロスペース、横浜シネマリンにて公開