オーバー50俳優、なぜ韓国で活躍?日本人ならではの魅力とは
近年、韓国映画界では鶴見辰吾(52)がキム・ジウン監督の『密偵』、大杉漣(65)がパク・フンジョン監督作『隻眼の虎』に出演するなど、“オーバー50”の日本人俳優たちが活躍している。なかでも、ナ・ホンジン監督と『哭声/コクソン』でタッグを組んだ國村隼(61)は、昨年韓国の第37回青龍映画賞で男優助演賞と人気スター賞を受賞して現地で大フィーバーに。韓国の監督から見た、オーバー50の日本人俳優の魅力とは一体どこにあるのか? 『チェイサー』『哀しき獣』などの鬼才ナ・ホンジン監督が語った。
「日本の方たちというのは、年齢のわりには非常にみなさん若いと思います。考え方も非常に若い。そのぐらいの年齢になると見せるのが難しいような演技をしてくださる。そういったところが、私たちから見ると非常に異質な姿に映るんです」という監督。韓国の50歳以上の人は“いい年齢を重ねてきた人”という印象が強いのに対し、「日本の方々というのは、実際にお会いしてみても考え方が非常に若いし、若い生き方をしているように思います。そうしたところに好感を持つんだと思います。『密偵』に出演された俳優さん(鶴見)も、試写会でお目にかかったんですけれども、一言一言が非常に若いし、本当にかっこいいなと思いました」と日本の俳優たちの年齢を感じさせない生き生きとした姿が新鮮だったよう。
また、「俳優というのは、現在どういう人生を生きているのか、どういう生き方をしているのかが非常に重要なのではないかと思います」と俳優自身の生き方が演技に影響すると力説。「どのような演技をしようとも、その人が持っている本来の香りというものがその演技の中に染み込んでいるのではないのか、そういったところから醸し出されてくるのではないのかなと思います。ですから国籍とは関係なく、そういった俳優、人間ひとりひとりが持っている個人の香りというものがあるのではないのでしょうか」。
では、今作でタッグを組んだ國村の印象はどうだったのだろうか。「最初は本当にベテラン俳優らしい演技や姿を見せてくださいました。映画での撮影経験が非常に多いということがわかるような、そういった姿をたくさん見せてくださいました。すごく良かったです」。しかし、その姿は先述の「個人の香り」とは異なるものだそうで、監督は撮影の中盤で國村にあるお願いをしたという。
「技術的にすごい、そういった演技ではなくて、編集するのが難しくなってもいいので、本当に一回こっきりの演技というものを見せてほしいと言いました。映画の演技というのは、(同じ場面をカメラのアングルを変えて撮ったりするため)同じ演技を本当に何度も何度も繰り返すじゃないですか。けれども、編集ができなくなってもいいので、一回こっきりの演技をお願いしますと申し上げました」。
その演技を引き出すために、監督自身もさまざまな考えを巡らせたそう。「そういった私の気持ちを理解してくださって、本当に一回ずつだけそうした演技をしてくださいました。私はとても満足していますし、本当にすごい、立派な俳優さんです。彼のそういう姿を通して撮影の間中私は本当にたくさんのことを学びましたし、本当に尊敬できる方だと思いました」と國村への称賛の言葉を惜しまなかった。
第69回カンヌ国際映画祭でアウト・オブ・コンペティション部門に出品された本作は、ある田舎の村に一人のよそ者(國村)が出現したのを機に、村の平和が崩壊し、人々が混沌の中に突き落とされるさまを描き出す。(編集部・吉田唯)
映画『哭声/コクソン』は3月11日よりシネマート新宿ほかにて公開