坂本龍一に5年密着 全てさらけ出したドキュメンタリー公開
世界で活躍する音楽家・坂本龍一を追ったドキュメンタリー映画『RYUICHI SAKAMOTO DOCUMENTARY PROJECT(仮題)』が11月に公開される。
1978年に結成したバンドYMOで日本にテクノポップブームを巻き起こした坂本。映画音楽家としても世界で名をはせ、自身も出演している『戦場のメリークリスマス』で手掛けた音楽は英国アカデミー賞作曲賞を、『ラストエンペラー』ではアカデミー賞作曲賞を受賞。最近では、『レヴェナント:蘇えりし者』や『怒り』の音楽を担当した。
本作は、2012年から5年間にわたる坂本への長期密着取材によって実現したもの。2014年に中咽頭がんが発覚してもカメラは離れず、過去の旅路を振り返りながら、新たな楽曲が誕生するまでを正面から捉えた。また、坂本の視点から見た東日本大震災についても描かれている。
監督を務めたスティーブン・ノムラ・シブルは、「震災後、坂本龍一さんの音楽表現がどのように変わるのか、新たにどのような曲を書かれるのか、もしそこまで密着可能であれば、何かカタルシスが生じるのではないか」と思い、それが制作のきっかけになったという。被災地を訪れている坂本は、宮城県名取市では水の影響で壊れたピアノの音色に触れたり、震災から3年後の2014年3月11日には、自ら防護服を着て福島第一原発を囲む特別警戒区に足を踏み入れてきた。
さまざまな経験を重ねた坂本が新たに生み出す、8年ぶりのオリジナルアルバムの制作過程も収録された本ドキュメンタリー。「プライベートスタジオも、自宅のピアノ室も、全てさらけ出した。こんな映画に坂本の私生活を覗くという以上の意味はあるんだろうか? 果たして映画として『見れる』作品となっているんだろうか? -いま、僕は完成が待ち遠しい」と坂本自身も期待している。(阿部桜子)