性別がなければよかった…グラミー賞歌手が“女性でいる難しさ”告白
アメリカで長年にわたり活躍しているシンガー・ソングライターのスザンヌ・ヴェガが、新アルバム「Lover, Beloved: Songs From An Evening With Carson McCullers」について、3月10日(現地時間)ニューヨークのAOL開催のイベントで語った。
カリフォルニア州サンタモニカ出身のスザンヌは、1985年発表のデビューアルバム「Suzanne Vega」で高評価を受けた。その後も児童虐待を受ける子供の視点から歌った「Luka」や、「Tom’s Diner」など数々のヒット曲を生み出した。2008年にはグラミー賞の Engineered Album 部門 Non-Classical: Beauty & Crime を受賞。映画『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』『忘れられない人』『好きと言えなくて』『クローサー』などに楽曲を提供している。
今作(アルバム)の楽曲は、小説「心は孤独な狩人」の作家カーソン・マッカラーズをもとにしている。「わたしがカーソンを好きなのは、子供、黒人、貧しい人々などの真実を書いているから。全ては無条件の愛にあるという信念が記されていて、それらが彼女の仕事によって輝いて見える。その内容は、ティーンエイジャーにも適していて、今日の社会とも関連性があると思う」。
カーソンはバイセクシャルを公言していた。スザンヌは異性愛者であるが、「若い頃は女性でいることが、難しい時期があった」という。「特に1980年代前半のわたしの写真を見ればわかるけれど、自分には全く性別がなければよかったと思ったことがあって、それが楽曲『Small Blue Thing』にも反映された。あれはラブソングだけれど、どちらの性別がどちらの性別に歌っているのかわからないわ」。
これまで自分が作詞した楽曲で、最も意味合いを持った曲は「おそらく『Luka』ね。『Luka』は、児童虐待という難しい題材を扱っていて、話すことがとても難しい。誰もこの題材を話したがらないから、Facebookで世界中の人々が、(児童虐待経験という)個人的なストーリーを(わたしに)教えてくれると、すごく意味があって、彼らとつながっている気がする」と語った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)