男は成長しない!『トレインスポッティング』続編のテーマとは
スコットランドの若者の日常を斬新な映像で描いた映画『トレインスポッティング』の約20年ぶりとなる続編『T2 トレインスポッティング』(4月8日 日本公開)について、前作に引き続きメガホンを取ったダニー・ボイル監督が、3月14日(現地時間)ニューヨークAOL開催のイベントで語った。
【本編映像】あれから20年!『T2 トレインスポッティング』
かつて、麻薬の売買で得た大金を仲間たちと山分けせずに逃亡したレントン(ユアン・マクレガー)は、20年ぶりに故郷スコットランドの実家に戻る。悪友たちのその後が気になったレントンは、ジャンキーのスパッド(ユエン・ブレムナー)、バーの経営者シック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー)と再会するが、レントンに恨みを持ち、服役中に脱獄したベグビー(ロバート・カーライル)に追われる羽目になる。
1990年代の大ヒット作の続編を製作することのプレッシャーについて、ボイル監督は「前作を台無しにしてはいけないと心から思っていた。実は約10年前に、原作者アーヴィン・ウェルシュの小説『ポルノ』の製作を考えていたが、内容が良くなくて諦めたんだ。その時点で、前作を焼き直ししたような作品は作らないと決めていた。今作は指針や信念を持って製作した。もちろん前作との関連はあるが、続編だけで成り立つ映画を作った」と明かした。
今作の予告編で使用された歌手ウルフ・アリスの楽曲「Silk」は、前作のアンダーワールドの楽曲「Born Slippy .NUXX」をほうふつさせる。「あれは本当のことを言うと、僕の娘が薦めてくれたんだ。年を取ると悲劇なのは、流行りの楽曲に疎くなることで、娘から『ウルフ・アリスの楽曲を聴いたことある?』と聞かれてね(笑)。その楽曲は劇中の最後の方のシーンで使用していて、とても感動的なものになった」。
今作のテーマについて「前作より告白的要素のある映画で、前作に登場したキャラクターを柱に手掛けた。脚本家のジョン・ホッジと僕は、キャラクターが年を取ることを認めていく過程を描いているが、ミッドライフ・クライシス(中年期特有の心理的葛藤)ではない。多少奇妙に聞こえるかもしれないが、『男は成長しない』ことをたたえているんだ。いかに男が過去の栄光にすがり、年を重ねるごとに情けなくなっていくかを描くことで、観客も楽しめる映画になった」と語った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)