大統領選で揺れる韓国 俳優も焦り「投票に行かねば、最悪の政治家が選ばれる」
韓国次期大統領選挙を見据えた18日、韓国憲政史上初の3期連続ソウル市長を目指す男性の選挙戦を描いた映画『特別市民(原題の日本語訳)』のメディア向け試写会がソウル市内の映画館で行われ、試写会後にソウル市長役のチェ・ミンシクをはじめ、クァク・ドウォン、シム・ウンギョン、リュ・ヘヨン、パク・インジェ監督が登壇して記者会見を行った。韓国では5月9日に大統領選挙を控えており、選挙戦という映画の内容から多くの報道陣が会場を埋め尽くした。
脚本も担当したパク監督は「人間の権力欲とは何かを考えたとき、政治家を描いてみようと思った。構想は3年前からしていたのだが、映画の劇場公開時期と大統領選挙が重なり戸惑っている」と大統領選挙に与える影響を懸念。だが関係者のだれもが大統領選の行く末を気にしているようで、本作に出演し、映画『哭声/コクソン』『悪いやつら』などで知られるドウォンは、「投票は国民の基本権。最良の政治家を選ぶために投票へ行かねばならない。投票に行かなければ、最悪の政治家が選ばれてしまう」と投票を呼び掛けていた。
主演のミンシクは、『隻眼の虎』(韓国公開:2015年)以降2年ぶりの映画出演となる。俳優人生で初めて政治家を演じたが、特に気負うことなく自然体で演じていたのが印象的。「3年前にシナリオ会議をしながら、なぜこの映画を撮るのかという話になった。映画の持つ多様な機能の一つとして、このような社会的メッセージを投げ掛ける力だと考えた。映画が一人一人の観客の共感を得て、投票所に行くきっかけになってくれればうれしい。政治に無関心な人々が関心を持ってくれればうれしいという使命感を持っていた」と説明し、映画の持つ力を意識しながら撮影に臨んだことを明かしていた。
本作は、ソウル市民のために働きつつも裏では誰よりも権力欲の強い現職ソウル市長のビョン・ジョングが、市長選挙において相手陣営の妨害工作や自身のスキャンダルなどの危機に直面しながらも、あらゆる手段を使って選挙を戦うストーリー。出演者らが語るように大統領選挙投票率の押し上げに一助するのか注目されている。映画は韓国内にて4月26日より劇場公開される予定。(取材・文:土田真樹)