廣木隆一監督の処女小説が映画化!震災後の福島からデリヘルのバイトで渋谷に行く女
『PとJK』『オオカミ少女と黒王子』の青春恋愛ものから、『さよなら歌舞伎町』『ヴァイブレータ』といった自分の居場所を探し求める大人たちの衝突や愛を鋭く温かく描く作品まで、幅広いジャンルで活躍している廣木隆一監督が、「どうしても描きたかった」という自身の処女小説を映画化。主演に『日本で一番悪い奴ら』などの瀧内公美を迎えて、廣木監督の出身地である福島が舞台の新作映画『彼女の人生は間違いじゃない』を、7月15日より公開することが発表された。
【画像】きれいなのになんだか切ない親子の姿…『彼女の人生は間違いじゃない』より
瀧内が演じるヒロイン・みゆきは、震災で母親を亡くし、仮設住宅に父親(光石研)と二人で暮らす女性。平日は市役所で働くみゆきは、父に東京の英会話教室に通っているとウソをついて、週末になると高速バスで福島から渋谷へ、デリヘルのアルバイトをしに行っている。本作には俳優の高良健吾、篠原篤、柄本時生も出演。高良はみゆきのバイト先の事務所の人間である三浦、篠原はみゆきの元カレの山本、柄本は市役所の同僚の勇人を演じる。彼らも、突然店を辞める三浦、被災地の今を卒論のテーマにすると東京から来た女子大生に“取材”され言葉に詰まる勇人、とさまざまな事情を抱えた人物として登場する。
震災から5年後の福島を舞台とする同作の映像化に、廣木監督は「朝起きて何気ない毎日が始まることと思っていた。5年と言う歳月はあっという間に過ぎていく。そんな時代に産まれた僕らの記憶と記録。今を生きている僕らの映画にしたかった。大げさに何かを言うのではなく、何かを伝えられる映画というものを信じるための映画にしたかった」と語る。また「ただ、その地に行って撮影して帰ってくるのではなく、その地に立って感じたことを全て描き切ること。ここには正直に向き合ったキャスト、スタッフの姿があるはずです」とも続ける。
その映画の核となるみゆきにふんした瀧内は、役になりきるために、撮影中は一度も家には帰らなかったという。「わたしは福島出身ではありません。そのわたしがこの題材を表現することができるのか、緊張して棒人間になっていたわたしに、『これは福島だけの話じゃない』と言ってくださった廣木監督の言葉が、わたしを前に向かせてくれました」と語った瀧内。
彼女は「本に描かれていることを表現することは難しくて、今の福島を見て聞いて感じて、撮影中、ずっと心が止まったり動いたり、無になったり、感じる事をやめたくなったり、いろんな想いがいっぱい生まれました。わたしは、本当に不器用な人間です。でも、伝えるのが下手でも手を差し伸べてくれる人が世の中にいて、廣木監督がいて、スタッフの方々がいて、その優しさや想いが映画になって、観てくださる皆様へ届けられたら、何か感じていただけたらなと思います」と全力で本作に臨んでいる様子も見せていた。(編集部・井本早紀)
映画『彼女の人生は間違いじゃない』は7月15日よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開