高良健吾、勢いだけの芝居から変化…「役が変わる」30歳への決意
2005年にドラマ「ごくせん」(第2期)で俳優デビューし、近年ではNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」、NHK大河「花燃ゆ」などのドラマで存在感を発揮、映画界でも『シン・ゴジラ』『うつくしいひと』など作品の規模に関わらず活躍する高良健吾(29)。「ずっと意識してきた」という30歳を目前に出演したのは、2006年の『M』以来何度もタッグを組んできた廣木隆一監督の最新作『彼女の人生は間違いじゃない』だ。彼が「役が変わる」ターニングポイントだと考える30歳に向けての決意や、演技の変化について語った。
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高良は、2012年に『苦役列車』で共演した森山未來のある言葉が忘れられないと振り返る。「未來さんが『27(歳)ってすごく中途半端だって感じたんだよなぁ』と言っていて、その時に僕はなんとなく『あぁ、そうかも』と思っていたんです」。実際、自身が27歳になった時には高校生役だけでなく父親役のオファーも来る転換期にさしかかり、これから求められる役柄が変化していくことを意識せざるを得なかったという。
そして、高良はそれまで「そこで感じた勢いだけ」で演じていた自身の芝居を見つめ直す決意をする。「それは絶対に忘れたくないですけどね。ただ、それだけはまずい」。かつては変化しないことを大切にしていた高良だが、30歳に向けて変化することを心掛けるようになった。「自分はこのやり方では30代で来た役ができないなと思う。30代はだいぶ変わっていくから、やらなきゃいけないことが増えるなというのは意識していました」。
一時期は人を殺したり、死んだりするアンニュイな役が多いことに苦悩することもあったが、そうした役に対するスタンスにも変化があったようだ。「ネガティブ発言ばっかりしているのは嫌だなって。10代で大変な役をやっていく後輩もたくさん増えてきているわけで。この仕事でツラい思いをする子もいると思うんですよ。その時に自分がネガティブな発言で引っ張りたくないなっていうのはあります。自分はそこを通ってきたから。その時に多くを共感するよりも理解して、見守ることが必要だと思います」。
しかし、そうした変化の中でも高良が変わらずに大切にしている言葉がある。それは18歳の時に廣木監督から言われた「ちゃんとその場に居ろ」という一言だ。30代でも目指す俳優像は「変わらず『ちゃんとそのシーンに居られること』だと思います。ちゃんとそのシーンに居られて、その映画の中にちゃんと居られたらいいなと思う。それが一番の理想ですね。ずっと」と自身の芝居の芯を明かした。
その廣木監督と再びタッグを組んだ映画『彼女の人生は間違いじゃない』は、廣木監督が故郷・福島を舞台に書き下ろした処女小説を映画化した作品。監督の念願の作品が完成したことに喜びをにじませた高良は、「廣木さんの映画は、出ている自分たちは怖いなと思います。いろいろバレるなという気がするんですよね」と廣木作品ならではの空気感をかみしめるように言葉にする。
劇中では、父親に英会話教室に通うとウソをついて週末ごとにあるアルバイトのため東京に向かうヒロインをはじめ、震災後の福島に生きる人々の姿が鋭くも温かいタッチで映し出されている。「廣木さんは福島の現状に対して、映画を武器にして表現している。そして、巻き込まれた人たちをすごく優しい目線で描いている。傷ついた人たちへの監督の優しさや眼差しがこの作品にはあふれていて、今すごく必要な映画だと思います」。そう語る高良の瞳には、自身の人生を変えた人だと公言する廣木監督への信頼と尊敬が浮かんでいた。(編集部・吉田唯)
映画『彼女の人生は間違いじゃない』は7月15日よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次公開