撮影中に監督クビ…制作トラブルは作品に悪影響を与えるのか?
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似合わない結婚は、やはり間違いだったのか? 若き日のハン・ソロを描く『スター・ウォーズ』のスピンオフ映画で、撮影中に監督がクビになった事件が、ハリウッドをショックに陥れた。(Yuki Saruwatari/猿渡由紀)
そもそも『スター・ウォーズ』という超大作に、『くもりときどきミートボール』『LEGO(R)ムービー』『21ジャンプストリート』などアニメやコメディーで知られるフィル・ロードとクリス・ミラーのコンビが起用されたこと自体が、サプライズだったのだ。ルーカスフィルムが新しい息吹を求めているというのはわかったし、うまくいけば面白いだろうとも思えたが、アドリブを奨励する彼らのやり方は、このブランドを正しく守っていくことを重視するキャスリーン・ケネディ(ルーカスフィルム社長)とローレンス・カスダン(脚本家)の意向にそぐわなかったようである。
撮影開始から4か月がたち、あと数週間で終了という段階になっての解雇はハリウッドでも前代未聞。ニュースが流れた日は、その話題で持ち切りになったが、翌日にロン・ハワードが新監督と発表されると、ムードはとりあえず安堵に変わった。数々のハリウッド大作を手掛けてきたこのオスカー監督であれば、正しい形に収めてくれると思えるからだ。
とりわけ業界内では、 撮影現場で深刻なトラブルがあると、映画もダメになると思われがちである。その根拠が十分にあるのは事実だが、必ずしもそうとは限らない。
たとえば『ワールド・ウォー Z』では、マーク・フォースター監督がさんざん予算オーバーをした上、プロデューサー兼主演のブラッド・ピットを怒らせるようなことを次々やらかし、現場の雰囲気が最悪になった。再撮が必要となって映画の公開が延期されると、駄作のレッテルがほぼ押されたが、結果は世界で5億ドル以上(約550億円)を稼ぐヒット作になり、続編の製作も決まっている(もちろん、フォースターに続編の声は掛からなかった)。(数字は Box Office Mojo 調べ、1ドル110円計算)
ピクサーのアニメ『レミーのおいしいレストラン』も、公開の20か月前にヤン・ピンカヴァが監督を降板し、ブラッド・バードに代わったが、十分に利益を上げた。もっと昔にさかのぼれば、『風と共に去りぬ』(1939)と『スパルタカス』(1960)がある。
『風と共に去りぬ』は、オスカーを8部門で受賞し、インフレ調整をすればいまだに史上最高の興行成績を誇る傑作中の傑作だ。しかし、撮影中にジョージ・キューカー監督がクビになり、ヴィクター・フレミングが引き継ぐという出来事が起きている。『スパルタカス』でも、主演のカーク・ダグラスの意向で、撮影中に監督がアンソニー・マンからスタンリー・キューブリックに代わった。
キューブリックは生涯、自分はあの映画に雇われたのであり、あれは自分の作品ではないとの姿勢を貫いた。だが、作品はオスカーを4部門で受賞している。ハワードも、このハン・ソロ映画を自分の代表作には数えないのかもしれない。それでも、素晴らしい映画になるなら、ファンとしては何の問題もない。