ワンダーウーマンに投影したヒーロー像 パティ・ジェンキンス監督が感じるハリウッドの変化
『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』でデビューした美女戦士の過去を紐解く映画『ワンダーウーマン』のメガホンを取ったパティ・ジェンキンス監督が、自身の描いた最強の戦士に込めた思いを語った。
兵役経験を持つイスラエル出身の女優ガル・ガドットを起用し、女性だけの部族のプリンセスとして育てられたワンダーウーマンことダイアナが、世界から争いをなくすために戦う姿を描く本作。世の中の不条理を知ってもなお、人類に絶望することなく奮闘する彼女の姿は、どこか同じDCコミックスのヒーロー・スーパーマンを思わせる。
「私も同じように感じていました。2人はどちらも力強さと温かさ、ユーモアを兼ね備えた存在。ワンダーウーマンは、彼の女性版でもあると思います」というジェンキンス監督。幼少期にリチャード・ドナー監督が1978年に発表した『スーパーマン』に大きく感銘を受けたといい、同作を観れば『ワンダーウーマン』をさらに楽しめると語る。
「7歳のころに観て、初めて感動で大泣きしたのを覚えています。スーパーマンがロイス・レインと2人で空を飛ぶシーンは、とてもロマンにあふれていて。いつか私もこんな感動を誰かに与える作品を作るんだって思いました。もしかしたら、あの時の私と同じ思いを皆さんに感じてほしくて、今も映画を撮っているのかもしれないですね」。
そのうえで監督は、「これまでのヒーロー物は良い人間が悪者に立ち向かうというシンプルな筋が多かったけど、ダイアナは、人への思いやりや愛をパワーの源にして世の中から争いをなくすために戦っている。世の中の複雑さも全て理解したうえでね。この映画では、新しい形の戦いに挑む、これまでとは違うヒーロー像を見せたかったんです」とも語った。
そんな本作は本国アメリカで絶大な支持を集め、『バットマン vs スーパーマン』の興行収入を抜く4億ドル(約440億円・1ドル110円計算)突破の大ヒットを記録。ハリウッドにおける女性ヒーローの描かれ方にもさらに変化をもたらすことになりそうだが、監督は「確かに『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『ハンガー・ゲーム』そして『ワンダーウーマン』と、ハリウッドでも女性キャラクターがより普遍的な存在になってきたなと感じています。アフリカ系アメリカ人や障害を持った人たちと同じようにね。逆に言えば、こんなにも長い時間がかかったのか……とも思うけれど」と苦笑すると、「むしろ、凝り固まったタイプの男性ばかりが主人公だった時代の方が異常だったとも言えます。劇中でダイアナは、さまざまなタイプの人間に出会い、さまざまな偏見を目にすることになりますが、それが世の中というのもの。それこそ、これからのハリウッドでは、彼女が目にする人々のようなさまざまなタイプの主人公が生まれてくるでしょう」と笑みを浮かべた。(編集部・入倉功一)
映画『ワンダーウーマン』は全国公開中