長澤まさみ、予定外の女優人生と結婚観
黒沢清監督の新作『散歩する侵略者』で、ある日別人のようになって帰ってきた夫に戸惑う妻を演じた長澤まさみが、30歳を迎えた自身の仕事に対する意識の変化や、結婚観について素直な思いを明かした。
2000年に「第5回東宝シンデレラオーディション」のグランプリを受賞してデビューを果たし、『世界の中心で、愛をさけぶ』のヒロイン役で全国にその名を広めた長澤。当時は清純派を演じることが多かったが、今年1月にはミュージカル「キャバレー」の歌姫サリー役を務めた。その変ぼうについて、「10代はアイドル映画のようなものをやる時代でした。あの頃は女優を続けていくのは無理だろうと思っていたので、今の自分は想像もしていませんでした」と楽しげに語る。
そこにあるのは、「観る人に楽しんでもらえる作品を作りたい」との思いだ。「女優を続けていける状況なら、どんな挑戦でもするべきだと思う。すごくギャンブルな仕事だし波はありますけど、自分はタイミングや周りの人々に恵まれているんです」と瞳を輝かす。そして、「たとえその作品がヒットしなくても、また一歩進んだと思えばいい。他の人に何を言われようが、自分の人生は自分のもの。臆することはないと思っています」と力強く語り、「もともと我が強くて負けず嫌いなんです」と語りつつも、いつものほんわかとした笑顔を見せた。
そんな長澤が本作で演じたのは、浮気をしておきながら突然豹変し、「地球を侵略しに来た」と言いだした夫・真治(松田龍平)と向き合うことになる妻・鳴海。夫への怒りが徐々に軟化し、愛を取り戻していくという役どころだ。「怒るときの温度が鳴海の愛情の深さに関わってくるので、すごく難しかったです」と打ち明けつつも、初の黒沢作品への参加で大いに刺激を受けたという。
ちなみに、長澤自身の結婚観については、「もっと若い頃は結婚に憧れていたけど、今は仕事仲間や友だちがいれば独身でも楽しく過ごせるし、自分だけでなんでも乗り越える術も知ってきてしまって……。そもそも、本当に合うパートナーを探すことが難しいです。すべてはタイミングじゃないですかね」とのこと。当面は家庭ではなく女優の仕事を追求していきそうな長澤の、次なる進化に注目したい。(取材・文:斉藤由紀子)
映画『散歩する侵略者』は公開中