ついにRT30万超えに…「けものフレンズ」たつき監督降板騒動を整理する
「たーのしー!」「きみは○○なフレンズなんだね」といった“フレンズ語”で社会現象を起こすほど爆発的な人気を誇ったアニメ「けものフレンズ」の立役者の一人である、たつき監督が25日にTwitterに放った衝撃的な告白。「突然ですが、けものフレンズのアニメから外れる事になりました」という彼のツイートは、27日現在リツイート数30万件を超えるほどの注目を浴びている。今も数々のメディアがこの騒動の去就を取り上げているが、一体何が起こっているのかあらためて状況を整理してみる。(編集部・井本早紀)
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まずアニメ「けものフレンズ」人気を振り返る
まずテレビアニメ「けものフレンズ」とは、今年1月~3月にテレビ東京で放送されたアニメである。だが、現在ほどアニメの放送当初からアニメファンの間で大人気……というわけではなかった。もともとアニメは、コンセプトデザインを手掛けている吉崎観音とKADOKAWA コミックス編集部編集長・梶井斉が立ち上げた「けものフレンズプロジェクト」のメディアミックス企画の一つとして作られたもの。だがその前に2015年配信されたアプリ版はアニメ放送開始前にサービスを終了しており、アニメ人気の後ろ盾がしっかり存在していたということではない。
その人気が爆発した一つには、第4話をきっかけにファンによる考察の輪が広がり、そして「すごーい」「たーのしー!」とネット掲示板で“フレンズ語”で会話している様子がTwitterなどを介して拡散されたことにある。第1話から動物たちの習性の丁寧な描写やキャラクター設定を突き通したこと、ほのぼのアニメと思いきや失われたヒトの文明などちりばめられた“裏設定のヒント”が、一気に花開く形となったのだ。
それは多少なりとも偶然が重なったといえども、第1話からアプリ版にはいない「かばんちゃん」というオリジナルのアニメ主人公を据え、脚本家の田辺茂範、吉崎、そして絵コンテ・演出・脚本・シリーズ構成など主要部分を一手に引き受けたたつき監督らが作り上げたアニメ「けものフレンズ」の世界観の勝利だったといえよう。そしてけもフレ旋風は加速し、映画館での一気見上映企画、動物園とのコラボ企画、JRAや日清「どん兵衛」とのコラボ動画、朝の時間帯でのアニメ再放送など深夜アニメを見ていなかった層まで「けものフレンズ」は波及していく。
これまで人気が出れば、2期決定もなるべくしてなったというものだろう。今年7月には、「けものフレンズBD付オフィシャルガイドブック (5)」(出版社: KADOKAWA)の帯で第2期の制作が発表。この時点では誰もが、けもフレ旋風の功労者であるたつき監督が続投されるという思いだったのだ。むしろ、アニメーション制作のほぼ全行程を行っていたたつき監督が抜けることなんてありえないと思われていた。
そして起こったたつき監督降板騒動
だが今月25日、たつき監督はTwitterで突然の発表を行う。「突然ですが、けものフレンズのアニメから外れる事になりました。ざっくりカドカワさん方面よりのお達しみたいです。すみません、僕もとても残念です」。このツイートは瞬く間にリツイートされ、話題を呼び、2日間にわたって「たつき監督」「人気アニメの監督」といったワードでTwitterのトレンドに入り続けた。
さらにこのツイートには、音楽番組でも流れた楽曲「ようこそジャパリパーク」を制作したミュージシャンの大石昌良や、声優の明坂聡美なども著名人も反応。ファンによる署名活動が盛り上がり、日本経済新聞も「<東証>カドカワが軟調 人気アニメの監督降板、悪影響を懸念」と報じるなど、“たつき監督騒動”は思わぬところにも波及していく。
そしてそれから約2日後となる27日、「けものフレンズプロジェクトA」側からの文書が「けものフレンズ」公式サイトで掲載された。文書によると、第2期の制作体制を継続するか否かなど調整していた時期に、たつき監督が所属するアニメーション会社ヤオヨロズから「8月に入った段階で辞退したい旨の話」を受けたという。
公式サイトではその契機について、「アニメーション制作を担当していただきましたヤオヨロズ株式会社には、関係各所への情報共有や連絡がないままでの作品利用がありました」と説明。「映像化プロジェクトとしては次回の制作を引き続きお願いしたかったため、情報は事前に共有してほしい旨の正常化を図る申し入れをさせていただきましたが、ヤオヨロズ株式会社からは、その条件は受け入れられないので辞退したい、とのお返事でございました」と現状に至った理由がつづられている。
またたつき監督のツイートには「カドカワさん方面よりのお達し」と記されていたが、文書では「けものフレンズプロジェクト」側からの要請となっている。公式サイトをみると「けものフレンズプロジェクト」はKADOKAWA以外にも、株式会社ファミマ・ドット・コム、株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント、Age Global Networks株式会社、株式会社ブシロードなど複数の企業によって成り立っている。
たつき監督の作品利用
そして先に挙げられた「作品利用」の話となるが、たつき監督はアニメの放送終了後今年4月に、自主制作アニメとしてニコニコ動画に投稿した動画「けものフレンズ 12.1話『ばすてき』」に投稿し、話題を呼んでいた。アニメの声優も起用して制作された同動画の投稿当時、コンセプトデザインの吉崎がTwitterで「最後の打ち合わせで、終わった後も自由に作っていいですよって言ったらたつき監督の目がキラーンってした気がしてたんだけど…まさか!」と反応し、周囲には“内緒”で進められたものだったことも示されていた。
テレビアニメ放送時、ほとんどすべての作業を行っていたたつき監督だからこそ仕掛けられた“おまけ動画”。それはアニメ放送終了後もたつき監督がいれば「けものフレンズ」は終わらないという希望をファンに与えることになり、さらなる「けものフレンズ」熱を加速させる燃料にもなった。ここからはあくまでも推論に過ぎないが、この動画はアニメ放送後も「けものフレンズ」人気を支えた重要な支柱であることは確かなはずだ。また吉崎のツイートからアニメの放送終了後に、たつき監督が新たな「けものフレンズ」の映像を作る意向を示していたことがうかがえる。だが「けものフレンズ」の規模が大きくなるにつれ、公式側で新たなルール制定がされた可能性もある。なお「けものフレンズ」公式サイトには、一般向けの「けものフレンズ」二次創作に関するガイドラインが記載されており、そちらでは「けものフレンズプロジェクト」に帰属する素材(イラスト、動画、音声、楽曲等)を直接二次利用することは禁じられている。
またテレビアニメ放送終了後の動画といえば、JRA×けものフレンズのコラボ企画「ウマのフレンズ」や日清「どん兵衛」とコラボ動画「ふっくら」も有名だが、こちらはJRA・日清共に「けものフレンズプロジェクト」の許諾を得た動画を作成したことをコラボサイトで公表している。
現在アニメ以外にも新ゲームやラジオ、舞台化、書籍化などメディアミックス企画の名にたがわぬ広がりを見せている「けものフレンズ」。この時期に今回の騒動が起こり、「けものフレンズ」の名が今までとは違う形で知れ渡ることに、一介のアニメ視聴者……フレンズとしてはさみしさを感じてしまう。