戦死した息子の遺体を自宅に持ち帰る リンクレイター新作は友情物語
第55回ニューヨーク映画祭のオープニングナイト作品『ラスト・フラッグ・フライング(原題) / Last Flag Flying』についてリチャード・リンクレイター監督、ブライアン・クランストン、ローレンス・フィッシュバーンが9月28日(現地時間)、ニューヨークのリンカーン・センターのウォルターリード・シアターで語った。
本作は、作家ダリル・ポニックサンの同名小説を『6才のボクが、大人になるまで。』のリンクレイター監督が映画化したもの。2006年にイラク戦争で息子を失ったドック(スティーヴ・カレル)が、ベトナム戦争時代のかつての仲間で今はバーの経営者サル(ブライアン)と教会の牧師リチャード(ローレンス)のもとを訪れ、息子の遺体を自宅に持ち帰るために彼らの助力を得る中でさまざまな問題が生じ始めるというストーリー。
原作の気に入った点についてリンクレイター監督は「ベトナム戦争とイラク戦争が、キャラクターたちの会話の中でお互いに影響し合っているところが良かったんだ。今作はある意味、戦争の体験が男たちにどんな影響を及ぼすかを描いているんだよ」と答え、続けて「ベトナムの帰還兵とイラク戦争の兵士を対照的に比較するのも面白いと思ったね」と語った。
戦死した息子の遺体を自宅に持ち帰るというダークな題材だが、劇中にはコメディー要素も多い。友人サル役のブライアンは「良い物語の構成は、かなりのユーモアを盛り込みながらもドラマを進展させるものだと思うんだ。ユーモアは、道徳的に豊かな構成を物語に与えるだけでなく、観客に対しても悲観的な題材の中で、笑いや、ゆっくりとした小休止の時間を与えてくれて、映画の世界に再び戻してくれるんだ」と話す。13才の時に敬愛する祖父が亡くなったという彼は、葬式でジョークを言った参列者に腹が立ったが、大人になってからジョークで嘆き悲しむ人がいることを知ったとも明かした。
それぞれ別の時代の戦争を体験した帰還兵たちは、価値観が全く異なるのか、それとも似ている部分があるのか。牧師リチャードを演じたローレンスは「彼らは似ていると思う。少し前にワシントンD.C.で、ジョー・マンテーニャとナショナル・メモリアルデー・コンサートの司会を務めたんだ。そこには残された人々や家族がいて、彼らは今作のキャラクターと似ていると思ったね。戦争映画では、そんな残された人々を扱った映画はあまりなかったように思うんだ」と嘆いた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)