オダギリジョー、新作で12キロ減!多くは語りたがらない壮絶な役作り
独特のオーラをまとってコミカルからシリアスまで幅ひろく演じわけ、スクリーンの中で唯一無二の存在感を放ち続ける俳優オダギリジョー。日本とキューバの合作映画『エルネスト』で伝説的な革命家チェ・ゲバラとともに戦った日系人という役どころに挑んだオダギリが、体重をぎりぎりまで落とし、全編スペイン語で演じるために徹底した役作りを断行したことを明かした。
この映画はゲバラと出会ってその静かに熱く燃える魂に触れ、やがて行動をともにしてボリビア軍事政権との戦いに散った日系二世フレディ前村を描いた人間ドラマ。フレディ前村を演じるにあたり「半年以上の準備期間を費やした」というオダギリは「やはりもっとも時間がかかるのはセリフだったので、そこから手をつけました。髪の毛を伸ばすのは1年半かかりましたが、そういった時間を逆算して始めた感じですね」と淡々と振り返る。
劇中に登場するボリビアでの戦いの場面では、フレディ前村はゲッソリと痩せてヒゲは伸び放題、髪も肩のあたりまで伸びているという姿だ。「ゲリラ戦からの撮影というのが決まっていたので、そういう環境に合った見た目が必要だろうなと思って」と語るオダギリは「ちょっとスポーツ選手に近いかもしれません。クランクインがここだから、その日までに肉体的にも精神的にもベストの状態に持っていくために階段を一つ一つ上る感じで」とコツコツとした努力をあくまでさらりと明かす。
また、オダギリは本作のために体重も2か月で12キロほど落としたそうだが「それほど特別なやり方があるわけではありません。夜ご飯を制限するとか、食事と運動で調整するくらい」とケロリ。しかし、時間をかけて作り上げた見た目の説得力が映画の奥行を深めているのは確かだ。
そして、フレディ前村のセリフはナレーションも含めてすべてがスペイン語。しかもボリビアにあるベニ州の方言を話す必要があり、「文法から単語一つ一つの意味を学び、文化的なことを調べるなど、いろいろな準備をしました。ベニ州出身の方に細かく話を聞いたりして」とオダギリはアプローチの仕方を説明する。「これまでも海外の作品に出演させていただき、自分なりのやり方のようなものを見つけているので細かく説明するのが難しいんですけど」と詳細は語らないものの、劇中で彼が現地の俳優とごくナチュラルにスペイン語で演技するさまを見れば、その努力が途方もないものだとわかるはずだ。
そんなオダギリの演技を撮影現場でカメラ越しに見ていた阪本順治監督は「彼がクランクインして最初のセリフを聞いたとき『ああこれは大丈夫』と思えました。もちろんそれまでに体重を落とすことを含めて、当然のようにキチンと準備してくれるだろうと思っていた」とオダギリへの絶大な信頼を隠さない。『この世の外へ クラブ進駐軍』『人類資金』そして本作と、監督と俳優としての確かな絆を築いてきた二人。男同士の、言葉で簡単には語れない相手への尊敬の念がこの映画の芯を支えている。(取材・文:浅見祥子)
映画『エルネスト』は全国公開中