斎藤工プロデュースのクレイアニメ、途上国での上映を開始!子供たちの反応は?
俳優・斎藤工が声優を務め、本名の齊藤工名義で企画・ストーリー原案・キャラクター命名・脚本に携わったクレイアニメーション『映画の妖精 フィルとムー』(秦俊子監督)がこのほど、カンボジアなどで上映された。同作は、発展途上国の子供たちに映画を届けることを目的にしており、早くも夢の第一歩を歩みはじめたようだ。
途上国の子供たちを対象に移動映画館を行うNPO法人World Theater Project(代表理事・教来石小織)発案の企画に、自身も移動映画館cinema bird(シネマバード)の活動を手がける斎藤が協力。活動を続ける中で、映画の権利問題が立ちはだかることから、権利フリーの映画を自分達で制作しようと、クラウドファンディングで制作の協力を呼びかけ、目標金額の455万円を遥かに上回る984万1,922円(10月31日で終了)が集まるという大きな反響を呼んだ。
第30回東京国際映画祭でワールドプレミア上映を行うと同時に、海外進出の準備も着々と進め、まずは World Theater Projectが2012年から活動を行っているカンボジアでの上映が実現。12月上旬に、シェムリアップ州とバッタンバン州の小学校や村を6か所まわり計651人が鑑賞。上映に立ち会ったWorld Theater Projectのメンバーで映画監督の内田英恵さんによると、いずれも農村にある学校で映画を見るのが初めてという子もいたという。
子供たちは、映画の妖精フィルと夢の種をイメージしたムーが織りなす冒険旅行を食い入るように見つめ、映画『ジョーズ』を彷彿とさせるようなサメが襲ってくるシーンでは悲鳴が上がる盛り上がりぶり。鑑賞後は、皆でフィルとムーの絵を描いて映画の余韻に浸っていたという。好評だったことから今後も週1~2回のペースで上映していく予定だという。
ほか、今回の活動に賛同した各団体や個人による上映も始まっており、ウガンダでは、アフリカでの移動映画館プロジェクト「cinema stars(シネマスターズ)」を稼働している写真家の桜木奈央子さんが、仕事で現地へ赴いた際、子供たち向けに上映会を開いたという。
さらにマダガスカルで移動映画館のプロジェクト「ZOVA an KIDS」を立ち上げた青年海外協力隊(JICA)の郡山文さんが、現地の小学校で鑑賞会を実施。そこはBSフジで今年3月に放送された番組「いつか世界を変える力になる」の取材で、斎藤が訪れた小学校。その際に映画館のない同所での映画上映を企画していたが、映画会社の上映許可が下りずに断念した経緯がある。その体験が『映画の妖精 フィルとムー』制作への原動力となった思い出の場所で、郡山さんは真っ先にその小学校で映画を見せたかったという。
鑑賞中の子供たちは声をあげて笑ったり映画を楽しんでいたようだが、映画冒頭でフィルとムーがスクリーンの中に飛び込んで冒険をするという、物語のきっかけとなるシーンがちょっと不思議に感じた様子。上映後、スクリーンの向こうに別の世界が広がっているのでは? と感じたのか、映像を投影していた壁を叩いて確認していた子もいたのだとか。子供たちから「もっと映画が見たい」という声が上がっているそうで、今後、映画上映が活発化していきそうだ。
教来石さんによると今後もラオスやミャンマー、ベトナム、ザンビアなどでの上映が予定。斉藤たちの思いを乗せたフィルとムーは、夢の種を蒔きながら、たくましく羽ばたき始めたようだ。(取材・文:中山治美)
■cinema bird
http://cinemabird.com
■cinema stars
https://motion-gallery.net/projects/cinema_stars
■ZOVA an KIDS
https://zovaankids.wordpress.com
■青年海外協力隊
https://www.jica.go.jp/volunteer/application/seinen/