実際の出会い系殺傷事件を基に映画化、監督「難しい事だらけでした」
実際に起きた殺傷事件を基にした映画『愛の病』の初日舞台あいさつが6日にシネマート新宿で行われ、瀬戸さおり、岡山天音、佐々木心音、吉田浩太監督が出席した。
本作は2002年に起きた和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件を題材にしたサスペンス。出会い系サイトで知り合った真之助(岡山)に貢がせた上に殺人まで強要したエミコ(瀬戸)を主人公に、愛と欲望に翻弄(ほんろう)される人間の姿を描く。
初主演ながら凄みのあるエミコを演じきった瀬戸は「(映画主演は)わたしが目標にしていた事でもありますし、何より監督と一緒に作品を作れる事は嬉しかったです」とコメント。客席から大きな拍手を受けると「作品自体もみなさんに受け入れてもらえるのか不安でしたけど、この作品をやって良かったと心から今思います」と感無量の笑みを見せた。
そんな瀬戸は冒頭のあいさつで故郷の福岡弁が混じるなど愛嬌のある雰囲気で、本作で初対面したという岡山は「最初は声も小さくて腰も低いイメージだったので、初めてお芝居を一緒にしたときはびっくりしました 」と素顔とのギャップを紹介。
劇中の鬼が憑いたような演技には吉田監督も「すごくやってくれたと思います」と称え、瀬戸は「監督ともいろいろとお話をさせていただいて、本能的な人物でありそれは人間誰しも持っていると思うので、そこを重要視しました」と説明。脚本を読んだ際にヤンキー風と書いてあった事から髪の色や眉毛を細くするなど外見も変えた事を振り返り、「孤独な女性だったので、親や友人とも連絡をとるのをやめてひとりの時間を多く作りました」と役づくりの過程を紹介した。
また、そんなエミコに振り回され犠牲者となる真之助を演じた岡山は「ハードな現場だったなと思います。久々に言葉が届かないところでお芝居をしているというか、ワンシーンワンシーンを素通りできないというか。そういう現場に久々に立たせてもらって、自分がやりたいのはこういう事だったんだと思い出せるような現場でした」と満足そうに話す。
最後に吉田監督は実際の事件を題材にした事について、「難しい事だらけでした。実際にいた人物なのでリアリティーは追及しないといけない。その一方で事件への興味もあり、そこを追い続ける事も大事にしました。また、作っていく中でああいう状況ならこういう事件を起こしてしまう事が誰でも起こり得るとも感じ、なるべく突き放さないで映画に向き合っていこうと思いました」と作品とどう向き合ってきたかについて語っていた。(取材・文:中村好伸)
映画『愛の病』は公開中