アカデミー賞短編アニメ賞に日本人候補!アメリカ人とフランスで製作『ネガティブ・スペース』って?
第90回アカデミー賞
第90回アカデミー賞の短編アニメ賞に『ネガティブ・スペース(原題) / Negative Space』でノミネートされた日本人の桑畑かほるとアメリカ人のマックス・ポーターのデュオが「この度は私達の作品がアカデミー賞にノミネートされ、とても嬉しいです。チーム全員で一針づつ、一コマづつ、沢山の想いを込めて制作が出来た作品です。チームの皆さん、応援してくれた方々に感謝の気持ちで一杯です」と喜びのコメントを寄せた。
日用品がこんなに小さく再現!『ネガティブ・スペース(原題)』場面写真
2008年から“小さな発明”を意味する「Tiny Inventions」として、米メリーランド州バルチモアを拠点に活動してきた桑畑とマックス。2人は、テレビコマーシャルやミュージックビデオの監督やプロデュースを行うかたわら、自主映画を製作してきた。そんな彼らの第4作目となる短編映画が、今回アカデミー賞にノミネートされた『ネガティブ・スペース(原題)』だ。ロン・コージによる150字ほどの詩に基づき、出張で家を空けてばかりいる父が息子にスーツケースの荷造りを教えるというストーリーを通して、父子のつながりを描き出す。父が航空機パイロットだった桑畑は、父の書斎の壁に“持っていくものリスト”が貼られていたという子供時代の記憶をよく覚えていて、原作の詩を読んで深く共感したのだそう。
また、本作をよりスペシャルなものにたらしめているのは、フランスで製作されたということだろう。アニメをアートとして大切にするフランスの文化にかねてから感服していたという2人。フランスでの滞在型創作活動を支援する CICLIC Animation Center のサポートを受け、その後はフランスのアニメーション製作会社である IKKI FILMS と Manuel Cam Studio と共同製作でつくりあげた作品なのだ。およそ9か月にわたった製作期間で、2人はフランスの4つの地域を転々としながら創作を行なったため、2人自身が荷造りのプロになったというほほえましいエピソードも。そんなめぐりあいによって実現した本作は、ストップモーションアニメならではの温かみが感じられる画に、荷造りがテーマとあって、衣服にハブラシやカミソリといった日用品の数々がリアルに再現されているのも魅力だ。
本作は世界最大のアニメーション映画祭・仏アヌシー国際アニメーション映画祭でプレミア上映されてから、様々な映画祭で賞を受賞。アカデミー賞のみならず、“アニメ界のアカデミー賞”ともされるアニー賞でも短編作品賞にノミネートされている。アカデミー賞短編アニメ部門に日本人監督作がノミネートされるのは、第87回にてピクサーの元スタッフで日本人クリエイターの堤大介が初監督を務めた『ダム・キーパー』以来、3年ぶり。受賞となれば、第81回での加藤久仁生監督作『つみきのいえ』以来、9年ぶりとなる。第90回アカデミー賞授賞式は、3月5日(月)午前8時30分よりWOWOWプライムにて生中継で開催される。(編集部・石神恵美子)