オスカー俳優フォレスト・ウィテカー、新作で尊敬する人権活動家に
映画『ラストキング・オブ・スコットランド』『大統領の執事の涙』などのフォレスト・ウィテカーが、南アフリカの人権活動家デズモンド・ツツ大主教に挑戦した話題作『ザ・フォギヴン(原題)/ The Forgiven』について、3月5日(現地時間)ニューヨークのAOL開催イベントで語った。
【予告編】話題作『ブラックパンサー』には名脇役として出演しているフォレスト
本作は、アパルトヘイト廃止後の1996年、ツツ大主教(フォレスト)が極悪犯罪者が収監された刑務所で、彼に救済を求めるピエット・ブロムフェルド(エリック・バナ)と対面するさまを描いたもの。『キリング・フィールド』『シティ・オブ・ジョイ』のローランド・ジョフィが監督を務めた。
これまで、ジャズミュージシャンのチャーリー・パーカーやウガンダの元大統領イディ・アミンなど、実在の人物を演じてきたフォレストだが、「今回、デズモンド・ツツ大主教を演じることは、かなり神経質になったね」と語る。「リアルなデズモンドの映像があるうえに、直接彼に何度も会えたんだ。だから、一から自分で役作りをするのとは異なった機会が今作では与えられたよ。でも最終的には、デズモンドを作り上げた彼自身の経験や人々との関係を探索していくことになったね」と入念な役作りを明かした。
今作以前に、自身が設立し、スーダンやアメリカなど5か国で活動しているWPDI(Whitaker Peace & Development Initiative)を通して、デズモンドに会っていたというフォレスト。役作りのために改めて会った彼について「僕は彼をずっと尊敬してきて、この惑星の宝だとも思っている。実際に彼と座って話し合った際に、彼が成し遂げたことを話してくれたことは、演じるうえで手助けにもなったし、その後何をすべきか理解させてくれたんだ」と感謝し、「彼は崇高な人で、許す(寛容に近い意味合い)ということが彼の信念に深く根ざしているんだ」と付け加えた。
本作の見どころの一つに、エリック演じる極悪犯罪者ピエットが、フォレスト演じるデズモンドの精神的基盤を会話で崩壊させようとする心理戦があるが、そんな2人の対峙についてフォレストは、「ピエットは、デズモンドが『許し』を受け入れたことで、自分たち犯罪者も自分自身のままで存在でき、最終的に自分たち犯罪者の勝利だ、と挑発する言葉を残すんだ。でも大きな問題は、そんな極悪犯罪者ピエットを許せるかということだ。生きたまま人を焼き殺したり、(人々を)拷問したりしてきた男ピエットは、デズモンドがピエットの言葉に驚いていることを察知して嘲笑するんだけど、もしその言葉にデズモンドが影響されたとしたら、それは彼の立場上問題があるということになるんだ」と説明した。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)