松坂桃李、女性の欲望を受け止められるか?器の大きさに驚く
石田衣良の小説『娼年』の映画化を、話題を呼んだ舞台と同じ三浦大輔監督とのコンビで完成させた松坂桃李が、“娼夫”という役を通して対峙した女性の欲望について語った。
この映画は石田衣良が「僕にとって特別な作品」と語る原作の映画化作品で、松坂の演じるリョウは生きることに手応えを感じられず、「女なんてつまんないよ」とつぶやきながら虚しい日々を送る大学生。リョウはふとしたきっかけで娼夫として働きはじめ、女性たちの奥深い欲望に触れていくのだが「人は誰しも見られたくないところや知られたくない部分、そこに触れられたくない傷を持っているもの。この作品には極端に思える性癖や悩みを抱えた女性が登場しますが、現実でも女性というのはそうした“柔らかい部分”がある。リョウという役を通してそれらに触れ、とても優しい気持ちになりました」と振り返る。リョウの優しい眼差しが映画の奥行を深めているのは、松坂の役への解釈と演技によるところが大きい。
肉体のコミュニケーションによって人がなにかを学ぶことがあるのかについて、松坂は「あると思います」と即答する。劇中のリョウの場合を例に挙げ、「最初は戸惑いながらさまざまな女性と出会って、こういう人もいるのかと知り、自身も過去を人に打ち明けたりする。やはり自分の柔らかい部分をさらけ出すのは怖いことでもあって、それをできるようになっただけでも大きな変化で、それは出会った女性のおかげです」と彼の成長に寄り添って共感してみせる。
一方で、もし自分なら女性の多様な欲望を受け止められるかには疑問符が浮かぶようで「まず単純に、自分は彼のような仕事はしないです!」と苦笑い。でも仕事としてではなく、それが本物の運命の出会いだとしたら話は変わるようで「あまりそれはビックリするようなことでないかもしれないですね。へ~……みたいな感じで意外と受け入れられるかも」というから、彼自身の器の大きさにも驚かされる。ここ数年、主役としてはもちろん脇役としても幅広い役柄で印象的な芝居を見せる松坂。俳優としての器はどれほどか、次はどんな役で驚かせてくれるのか、目が離せない。(取材・文:浅見祥子)
映画『娼年』はTOHOシネマズ新宿ほかにて全国公開中