松坂桃李、役所広司とのバディは「何よりの宝」
俳優の松坂桃李が25日、都内で行われた映画『孤狼の血』完成披露試写会に来場、「役所(広司)さんとバディを組んだことが、何よりの宝」と晴れやかな顔で語った。
『凶悪』の白石和彌監督がメガホンを取った本作は、暴力団対策法施行以前の昭和63年の広島を舞台に、刑事、やくざ、女たちが、それぞれの正義と矜持を胸に生き残りをかけて戦う生き様をバイオレンス描写とともに描き出した作品。この日のイベントには、役所広司、真木よう子、中村倫也、音尾琢真、阿部純子、竹野内豊、伊吹吾郎、ピエール瀧、江口洋介、原作者の柚月裕子、そして白石監督も来場した。
黒いうわさが絶えない刑事・大上(役所)の手段を選ばない捜査方法に疑問を持ちながらも、徐々に影響を受けていくエリート新人刑事・日岡という役柄は、松坂の新境地とも呼ばれている。松坂は、「役所さんとバディを組んだことが、何よりの宝で。この作品で役所さんが使っているライターがあるんですが、それをいただきました」と語ると、懐からライターを取り出し、会場からは歓声が。さらに「映画を観終わった後は、きっとこれをうらやましいと思ってもらえるんじゃないでしょうか。そういう濃厚な関係性の中で撮影できたことが宝物でしたね」と付け加え、晴れやかな顔を見せた。
かつて東映で製作された“不良性感度映画”の系譜を受け継ぐ本作。やくざ組織の若頭を演じた江口が「東映さんがやってきた『仁義なき戦い』からかなり時間がたって、Vシネマブームがあって。そこから時間が止まっていたように思いますが、この映画が突破口になればいいなと思います」と語れば、当時を知る伊吹が「昭和48年に東映が実録ものをやろうということで一発目にやったのが『仁義なき戦い』ですが、あれはあの時代だからこそできた作品だと思う。当然、その筋の方にお世話になり、指導してもらいました。でも今の時代にこれを企画した東映のスタッフの皆さんは大変だったと思う」と関係者をねぎらう一幕もあった。
そんな裏社会の男たちに関わるクラブのママを妖艶に演じる真木は、「オールキャストが切磋琢磨(せっさたくま)するさまを間近で見て、カッコいいなと思ってしまった。それと同時にわたしも、男性だったらやりたいなと思うくらいカッコいい男性たちばかりだったので、うらやましさもありました」と惚れ惚れとした様子を見せた。
そんな舞台挨拶も終盤を迎え、最後のコメントを求められた役所は「初めて監督にお会いした時に、元気のある日本映画を作りたいんだとおっしゃっていただきました。やくざ関係のキャストの人たちは、普段は社会人みたいな顔をしていますが、根は不良ですからね。すごくノビノビとやくざを演じていらっしゃいました」と切り出すと、「僕と松坂君は刑事で、正義の味方をやっています」と冗談めかして付け加え、会場を大いに沸かせた。(取材・文:壬生智裕)
映画『孤狼の血』は5月12日より全国公開