広瀬すず「埋もれる」怖さ克服 二十歳を目前にした心境
櫻井翔主演、東野圭吾原作のミステリー映画『ラプラスの魔女』で、タイトルロールともなった自然現象を予知するヒロインを演じた広瀬すずが、10代最後の劇場公開作品となる本作を通し、20代を目前にした現在の心境を明かした。
広瀬は、雑誌「Seventeen」のモデルとして2012年に芸能活動を始め、2013年のテレビドラマで女優デビューしたのち、主演ドラマ「学校のカイダン」(日本テレビ系)の放送と、数々の映画新人賞を総ナメにした映画『海街diary』の公開が重なった2015年に大ブレイク。2016年の『ちはやふる -上の句-』で初主演を務めたほか、以降も主演やヒロインを務めた映画やドラマに次々と出演して実績を積み、2017年公開の『三度目の殺人』では第41回日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞するなど、若くして高い評価を受けてきた。
女優として順風満帆な活躍を遂げてきたように思うが、『ラプラスの魔女』公開後の6月19日に20歳を迎える広瀬本人は、意外にも不安のようなものがあり、「不安というほど重くも感じていなかったんですけど、20代になると『きっとわたし以上にうまい人はもうたくさんいらっしゃるから、完全に埋もれてしまう』と思っていたんです」との胸の内を明かす。その「埋もれる」という懸念は、「これまでは10代だからこそできる素敵な作品に運よく出会うことができ、たくさん得難いことがありましたが、20代になると候補者の方の幅も広がるので、その中で自分がどんなものを残せるのだろう」との思いからだった。
「『どうなるんだろう』という思いが重なりすぎて、きっと今以上に運気が上がる感じはしないくらい、何か詰まっている感じがありました」とまで思い詰める時もあったそうだが、そんな思いを払拭できたのは、撮影順としては10代最後に出会うことができた主演ドラマ「anone」(日本テレビ系)だった。「田中裕子さん、小林聡美さん、阿部サダヲさん、瑛太さんなどの先輩方の演技を間近で4か月も見させていただいて、役とか年齢は関係なく、今自分ができるものを全身全霊で演じるという姿が格好良かったですし、これまでと違うすごく刺激的なお芝居に出会った気がして、『あ、何考えてたんだっけかなあ』と思ったくらい、自分の中に余裕ができて軽くなったというか、お芝居をすることがこれまで以上に楽しみになりました」。
「anone」は、「永遠にこの作品が続けばいいのにというほど楽しくて、もっとこういう作品をやりたい」と思ったそうだが、これまでこの役をやりたいと思って自らの希望でオーディションを受けたのは『怒り』(2016)だけで、作品選びは信頼できる事務所のスタッフなどに任せてきたという。そのため、キラキラ青春映画から骨太な人間ドラマまで、幅広いジャンルのいい作品に出会えてきているのは自分の力ではないとの思いもあるようだが、「青春映画やラブストーリーは得意な方ではないので、『大変だな~』って思うことはありますが(笑)、わかりやすく反響の大きさが伝わってくる面白さを感じます。ただ、元々『怒り』のようなジャンルの映画を観てきて、お芝居って面白そうだなって思ったのがきっかけでした」とも述べ、自らのやりたい作品というものが明確になってきていることを窺わせる。
そんな広瀬は最新作『ラプラスの魔女』について、「こういう特定の色味のない作品というか、観る方によっていろんな正解のある作品の方が、個人的には観るのも好きですし、演じるのも面白いです。あまり観たことがない感覚の映画になっていると思います」と語る。自然現象を予知することで人を殺せるのか? 奇想天外な事件の顛末を描くサイエンスミステリーのような作品で、自らも自然現象を予知する謎の女性・円華(まどか)にふんした広瀬は、櫻井翔ふんする大学教授とともに事件の謎を追うことになる。撮影は昨年の春に行われたそうだが、三池崇史監督の撮影現場は、「わたしは細かくリハーサルを重ねてできるタイプじゃないので、動きだけを確認してすぐに本番というのはやりやすかったです。すごくまかせてくださるし、この瞬間だからこそ生まれたといったようなものを、大切にしてくださっているイメージでした」と振り返る。現在の広瀬自身の志向にも合っていた『ラプラスの魔女』は、10代の広瀬を記録しているだけでなく、20代を迎える広瀬の今後を見据えた作品とも言えるだろう。(取材・文:天本伸一郎)
映画『ラプラスの魔女』は5月4日より全国公開