ローマ法王に直接対面、ヴィム・ヴェンダース監督最新ドキュメンタリーでの貴重な体験を明かす
映画『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』のヴィム・ヴェンダース監督が、ローマ法王フランシスコを題材にしたドキュメンタリー映画『ポープ・フランシス:ア・マン・オブ・ヒズ・ワード(原題)/ Pope Francis: A Man of His Word』について、5月17日(現地時間)、ニューヨークのAOL開催イベントで語った。
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本作は、ヴェンダース監督がバチカンの協力のもと、フランシスコ法王とのインタビューを敢行し、貧困、環境問題、社会問題などさまざまな質問を投げかけ、ローマ法王の真摯な観点を浮き彫りにした話題作。
法王に直接4度、それぞれ2時間ずつ話すことができたというヴェンダース監督は、「ぶらぶらと一緒に過ごしたり、映画を観たり、サッカーを共にやったわけではないが、彼と親密になることはできたと思うよ。それは、わたしの(映画製作)義務として、観客と共有できる信じられないくらい素晴らしい特権だったね。実際の映像でも、あえて観客がフランシスコ法王に対面しているかのように撮影を試みたんだ」と語る。法王には、撮影前に現在のテクノロジーを説明し、どんな映像になるかもモニターで見せたそうだ。
限られた時間内に法王にインタビューするにあたり、事前に約55もの質問を用意していたそうで、「小児性愛やゲイ、生と死、僕個人の死への概念など、多少(答えるのが)難しい質問も含めたんだ。通常ならば法王に聞かない質問にも挑戦してみたよ。ところが彼は全ての質問に恐れることなく、自然に答えてくれた。加えて、とても素晴らしい聞き手でもあったよ」とヴェンダース監督。映画内では法王を全能者として捉えずに、リアルな人として描いているのも魅力の一つだ。
また、現場では、法王が誰に対しても同じ様に接し、とてもオープンだったことに驚かされたそうで、「彼自身が僕にとってはサプライズだった」と明かす。「現れるなりすぐに、一人一人と握手し、それぞれに言葉を交わしていたんだ。分け隔てることはなかったし、われわれもとてもアプローチをかけやすかったよ。ただ、彼の目を見ると、(われわれにとって)彼こそが真の法王であることが理解できたんだ」と貴重な体験を語った。
映画内で、「貧しい教会が、貧しい人々に献身的に捧げている姿を見てみたい」と口火を切り、「教会が富に信頼を置くことがあれば、イエス・キリストは存在しなくなる」とも語った法王。ヴェンダース監督は、そんなフランシスコ法王を「かなり急進的な価値観を持った法王。彼は、(先を見据えて)日々を少し控えめに過ごしているんだ」と説明し、彼がリムジンではなく小さな車に乗り、それまでの法王が住んでいた宮殿の横のペンションみたいな場所に住んでいることを明かした。そして、法王として人々を支配するのではなく、人々に仕える意志を持った法王であることを強調した。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)