2018年下期、大ヒットを予感させる期待の映画
2017年の『美女と野獣』、2016年の『君の名は。』のように、その年を代表するメガヒット作は、2018年の場合、どれに当たるのか? その答えはまだ出ていないと言っていいだろう。年明けからしばらく年間興行収入のトップに立っていたのは、昨年末に公開された『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』で、その数字はおよそ75億円。しかし公開中の『名探偵コナン ゼロの執行人(しっこうにん)』が公開9週目に累計興収80億円を突破し、『最後のジェダイ』を抜き去った。この勢いで最終的に2018年の1位となる可能性も出てきた。(文・斉藤博昭)
その『名探偵コナン』の独走を阻む作品があるとしたら、やはり夏休み映画になりそうだ。2018年の夏は、邦画・洋画を合わせて「4強」の熾烈な争いが予感される。夏のトップを狙うのは、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(7月13日公開)。夏休みにふさわしいアトラクション感覚のアクション超大作であり、前作『ジュラシック・ワールド』が2015年の興行収入で1位を記録した。とはいえ、その数字は95.3億円。再び年間1位を獲得するには、前作と同レベル、もしくはそれ以上の数字が必要になってくるだろう。
安定感でいえば、トム・クルーズの人気シリーズ最新作『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(8月3日公開)が挙げられる。通常、シリーズものは回を追うごとに数字も落ちていくのだが、この新作に関しては、その法則は当てはまらない。1作目からの興行収入を振り返ると、約72億円(配給収入36億円)→97億円→51.5億円→53.8億円→51.4億円と、2作目だけが突出しているものの、3作目以降の安定ぶりは驚くべきものである。その流れで今回の6作目は50億円、さらにそれ以上の目標も設定可能である。
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(6月29日公開)の数字も気になる。『スター・ウォーズ』のスピンオフ作品として、比較の対象となる『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)が46.3億円だったが、今回はハン・ソロという人気のキャラクターが主人公ということで、さらに高いポテンシャルを秘めている。『スター・ウォーズ』は過去3年間、本シリーズとスピンオフが1年交代で公開されてきたが、『ハン・ソロ』は『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』から6か月という早いタイミングでの公開。はたしてこれが吉と出るか?
こうした強力な洋画アクション大作陣に対し、邦画として特大ヒットをめざすのが、アニメの話題作だ。『サマーウォーズ』(2009)、『おおかみこどもの雨と雪』(2012)、『バケモノの子』(2015)と、3年ごとに新作を夏休みに公開し、ファンを増やしてきた細田守監督。今や日本アニメ界、最大のヒットメーカーの地位を手にした彼の新作『未来のミライ』(7月20日公開)は、その期待感、家族の物語というテーマからして、爆発的ヒットは確実だろう。夏休み映画はおろか、年間のトップを狙える作品だ。カンヌ国際映画祭での反響から、その完成度も保証されている。
以上、『未来のミライ』までが夏休み映画の「4強」と思われたが、実写の邦画でサプライズヒットが生まれた。カンヌ国際映画祭パルムドール受賞の『万引き家族』(是枝裕和監督)だ。公開後7日間で10億円を超えたのは、2018年の実写邦画で最速のペース。観客の満足度も高く、このままいけば40~50億円を狙えるので、夏休み映画は「5強」となるかもしれない。
さらに人気ドラマの映画化『劇場版 コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』(7月27日公開)や、木村拓哉、二宮和也という豪華共演が話題の『検察側の罪人』(8月24日公開)あたりが、クチコミや出来ばえによって、どこまで数字を伸ばせるかに期待がかかる。これに、前作が興収38.4億円で、2017年邦画実写のトップだった『銀魂』の第2弾『銀魂2 掟は破るためにこそある』(8月17日公開)を加えると、この夏は邦画の実写作品もかなりハイレベルな争いになる予感がする。
5月末現在、実写作品で『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』に次ぐヒット(約52億円)を記録しているのが、『グレイテスト・ショーマン』。これは当初、配給会社すら予想できなかった数字で、こうしたサプライズも2018年の後半、起こしそうな作品がある。『ボヘミアン・ラプソディ』(11月公開)だ。伝説的ロックバンド・クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの人生を描く作品で、音楽のインパクトは絶大。『グレイテスト・ショーマン』の熱狂が重なるうえ、タイトルとなった名曲をはじめ、クイーンの曲は日本でも衰えない人気を維持しているので、ヒットの要因はいくつもある。
邦画で音楽要素という点では、1990年代のヒット曲がキーポイントになる『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(8月31日公開)が、ある一定の層に強烈にアピールする可能性が大。引退を表明した小室哲哉の最後の映画音楽という点など、話題を集めそうな作品だ。
2018年は例年にも増して、夏休み映画に年間トップをうかがう作品が公開されるので、その勢いが秋公開作品の意外な躍進につながる好循環に期待したい。そして年末には『ファンタスティック・ビースト』シリーズの第2弾『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』(11月23日公開)が控える。お正月映画の中心ではあるが、前作の興収が73.4億円なので、独走にはならず、他の作品にも大いにチャンスはある。秋から年末にかけて、サプライズのヒット作が生まれるのではないだろうか。(数字は配給、日本映画製作者連盟調べ)