小学生と幽霊の物語『若おかみは小学生!』が日本に先駆けフランスで公開決定!
令丈ヒロ子の同名児童文学シリーズが原作のアニメ『若おかみは小学生!』が9月21日の日本公開に先がけ、9月12日にフランスで公開されることがわかった。同作品は先ごろフランスで行われた世界最大級のアニメーション映画祭である第42 回アヌシー国際アニメーション映画祭長編コンペティション部門でワールドプレミア上映されて好評を得ており、一般公開に先駆けて幸先の良いスタートを切った。
同作は、“おっこ”こと小学生6年生の関織子が主人公。交通事故で両親を亡くした おっこは祖母が営む春の屋旅館に住むことになり、そこに住み着く幽霊のウリ坊の策略で後継候補として若おかみ修行をすることに。奇妙な幽霊やさまざまな事情を抱えた客と接しながら悲しみを乗り越え、人としても成長していくハートウォーミング・ストーリーだ。
テレビシリーズ版は4月8日よりテレビ東京系で放送中。劇場版と同じマッドハウスとDLEが制作を行っているが監督と脚本が異なり、劇場版の監督を『茄子 アンダルシアの夏』(2003)の監督や、『風立ちぬ』(2013)の作画監督を務めた高坂希太郎。脚本を『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015)や『夜明け告げるルーのうた』(2017)、『リズと青い鳥』などを手がけている売れっ子の吉田玲子が担当していることでも注目だ。
監督と脚本をテレビ版と分けたことについて、齋藤雅弘プロデューサーは「テレビ版は小学校高学年、劇場版は幅広い層にとターゲットを分けています。具体的な例を言うと、テレビ版では小学生に対して死の描写を詳細に描くのは得策ではないと考えて、あまり描かなかった交通事故のシーンを、劇場版ではちゃんと表現しています。それはおっこの行動原理となる両親の死を丁寧に描かねばならないと思った判断からです」と説明した。
一方、高坂監督は本作に挑むにあたり、「日本のアニメで良く表現されるのが自我の感情の手当て。ありのままの自分が好きとか、自分の気持ちをわかってほしいという内容が多く、素晴らしい作品も多い。自分はそこで勝負しても勝てないと思い、(傷ついたおっこが)自分をなくすという方法で物語を作ったら新しいのではないか。自分ではどうにもならない局面に遭遇したとき、若おかみとして問題を解決していくという方法に至りました」と作品に込めた思いを語った。
ただ会見では愛する人の喪失という深い傷を負った少女の癒しや許しといった心の旅路を描いている奥深い内容であるのに対して、タイトルに小学生とついていることから年齢層を限定してしまうのではないか? 他の選択肢はなかったのか? と危惧する声もあった。
それについて齋藤プロデューサーは「実はこのタイトルに決めたのは最近で、約1年ぐらい議論を重ね、マーケティングリサーチも行いました。客層を限定するリスクもありましたが、それ以上に原作ファンが多く、彼らに訴求していくことが大事という結論に至りました」と葛藤があったことを明かした。
ちなみに海外では、オリジナルタイトルを直訳すると長くなってしまうことから英語圏では『オッコズ・イン / Okko`s Inn』(おっこの宿の意味) 。フランスではOkko Hotelsというホテルチェーンが実際にあることから混同を避けるため、『オッコ・エ・レ・ファントム / Okko et les fantomes』(おっこと幽霊たち)のタイトルで公開される。(取材・文:中山治美)