月9初主演の沢村一樹、勢い止まらない50代
7月9日スタートの連続ドラマ「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」(フジテレビ系)で月9初主演を務める沢村一樹。昨年7月に50代に突入。シリアスな役からコメディーまでを演じ分け、主演としても脇役としても活躍し続ける沢村が月9主演を射止めるまでの歩みを、近年の出演作を中心に振り返ってみた(視聴率はビデオリサーチ調べ・関東地区)。
かつてはファッションモデルとして活動し、俳優に転向した沢村。「救命病棟24時」(第1シーズン)や「ショムニ」(第2・第3シーズン)などの人気ドラマに出演し、2000年からは2時間サスペンス「浅見光彦」シリーズ(TBS系)で、辰巳琢郎から主人公・浅見光彦を引き継いだ。2006年からはコントを中心としたバラエティー番組「サラリーマンNEO」シリーズ(NHK)にも出演。“セクスィー部長”こと色香恋次郎という強烈なキャラを演じ切り、新たな一面を見せた。また、バラエティー番組などで下ネタトークをする姿などから“エロ男爵”の異名をとり、芝居以外の場所でも存在感を増している。
まずは、2011年10月期、その後2013年7月期、2015年1月期にかけて3シーズンの連続ドラマ、3回のスペシャルドラマが放送された「DOCTORS~最強の名医~」シリーズ(テレビ朝日系)。沢村演じるスーパードクター・相良浩介が、利己的な医師や看護師の欲望渦巻く病院を、患者のために立て直そうとするストーリー。今年1月に放送されたスペシャルでは12.9%の高視聴率を記録し、さらなる続編を希望する声も多い。
2015年10月期のドラマ「偽装の夫婦」(日本テレビ系)では、自身初となるゲイ役に挑戦。それまで沢村が演じてきた役柄とは一線を画すキャラクターだったが、予想を超えるハマり具合に多くの視聴者を驚かせた。視聴率も初回の14.7%をはじめ、全話で二けたを記録している。
そして、近年の沢村の活躍を語る上で欠かせないのが、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(2017)だろう。沢村はヒロインである茨城県の米農家の長女・谷田部みね子(有村架純)の父・実を演じている。物語が進む中で記憶喪失になっていることが判明する実の心情を目の動きや表情などで見事に表現するだけでなく、妻・美代子(木村佳乃)との純愛も視聴者を感動させた。
「ひよっこ」出演後、2017年10月期には「ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~」に主演。「ひよっこ」を手掛けた脚本家・岡田惠和と再びタッグを組み(谷口純一郎と共同執筆)、大手広告代理店から弱小広告代理店に転職し、寂れた商店街を再生させるべく奮闘する元売れっ子広告マンを演じた。視聴率は伸び悩んだものの、ハートフルな展開で視聴者の心をつかんだ。
2018年1月より放送されたNHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」にも出演した沢村。演じた薩摩藩の重臣・赤松靭負(ゆきえ)は、出番としては少なかったが、主人公・西郷吉之助(後の隆盛)に大きな影響を与える重要な役どころだった。
2018年4月期には、波瑠主演「未解決の女 警視庁文書捜査官」(テレビ朝日系)に出演。架空の警察組織・文書解読係を舞台に、沢村は、花形・捜査一課への返り咲きを狙う、プライドが高く大人げないほど嫌味な上司・古賀清成を演じた。いかにも“嫌な人”の役を演じるイメージがあまりない沢村だが、このドラマでは、視聴者をもれなくイライラさせるような意地悪な上司を見事に演じ切っている。ドラマ自体も、初回視聴率14.7%以降も二けたをキープした。
そして、今年7月クールの「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」(7月9日スタート/フジテレビ系)で満を持して月9主演。沢村はシーズン1、シーズン2で上戸彩が主演を務めたドラマ「絶対零度」シリーズの新たな主人公として、公安から転属してきた刑事・井沢範人を演じる。
井沢をはじめ、警察内の厄介者たちが集められた総務部資料課。実は彼らは、犯罪を起こす可能性が高い危険人物を割り出す未然犯罪捜査システム・通称『ミハン』システムの実用化プロジェクトを秘密裏に託されていた。前2作の主人公・桜木泉(上戸彩)も物語に深く関わっており、鍵を握る人物として登場する。
沢村が演じる井沢は、ひょうひょうとしてつかみどころがない人物。明るく振舞ういっぽう、過去のある事件がきっかけで心に闇を抱えているという役どころ。二面性がある井沢を、さまざまな役柄を演じた経験が豊富な沢村がどのように演じるのか、期待が高まる。(文:空井由貴)