福士蒼汰のアクション俳優としての素養!動きに感情を乗せる力
「仮面ライダーフォーゼ」をはじめ、『図書館戦争』シリーズや、『無限の住人』、『曇天に笑う』、そして最新作『BLEACH』など、アクションを演じることが多い福士蒼汰。プライベートでもフィリピン武術のカリを習うなど「アクションは大好き」と公言しているが、彼のアクション俳優としての素養はどこにあるのだろうか。『BLEACH』でアクション監督を務めた下村勇二に話を聞いた。
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『GANTZ』シリーズや『図書館戦争』『アイアムアヒーロー』『いぬやしき』など佐藤信介監督とタッグを組み、質の高い作品を作り上げてきた下村アクション監督。「人気のある漫画原作でアニメ化もされている。そのなかでの実写化なので、超人的な動きにするのか、生身の人間ならではの臨場感溢れるものにするのか、ものすごく悩みました」と『BLEACH』でのアクションのコンセプトを語る。
下村アクション監督は、悪霊・虚<ホロウ>、阿散井恋次(早乙女太一)、朽木白哉(MIYAVI)という戦いごとに、それぞれ、見せ方の違うアクションを演出したという。そんな敵と相対する主人公・黒崎一護を演じたのが福士だ。
「一護のアクションは、福士さんが演じるということを意識して組み立てました。彼は仮面ライダーもやっていて、アクションはできるという認識があったので、普通よりもハードルの高いアクションにチャレンジしてもらうようなイメージ。スタントマンはいましたが、基本的にはノースタントでなるべく本人ができるところまでやってもらったんです」。
福士は、下村アクション監督がイメージした立ち回りを、しっかりとこなしていったというが、「一護は徐々に強くなっていくという設定のため、受けのアクションが多い。でもこれまで福士さんは、どちらかというと強いキャラクターを演じてきたので、攻めのアクションの方が慣れていました。その部分は現場でも悩んでいましたね」と打ち明ける。
それでも「彼のアクション俳優としての魅力は、動きのなかでしっかりお芝居ができること。例えば、身体能力が高く、アクロバティックな殺陣を見せても、そこに感情が乗っていない方もいます。すると映画のなかでは浮いてしまうのです。その点、最初は苦戦していましたが、受けのお芝居の素養も高かったです」と説明する。
アクションチームが作り上げたプランに命を吹き込むのが俳優たち。「僕らは設計図を作る。そしてそのキャラクターたちが躍動していくのは、動きの技術だけではなく、やはりお芝居が重要なんです。感情が入るからこそ、そこに僕らが予期せぬ動きが生まれる」。
下村アクション監督は、見どころがある俳優には、アクションにあえて“のりしろ”を作るという。「動きとお芝居が融合できる人なら、本番でもっとやってくれるだろうという期待と想像をしながら動きを作っていきます。福士さんもそういうタイプです。実はもっとやりたかった。ただ先ほども言いましたが、彼の役は、徐々に強くなっていくキャラクターなので、出せる部分には限界があります」。
「動きがキレイだけれど、そこに必死さや殺気などの感情が見えないと、観客は作品に入り込めない」とアクションの本質を語ると「アクションといっても、映画の一部であるので、当たり前ですが、演技力は絶対的に必要なんです。そのうえでフレームにビシっと収まったり、画力を作れたりする福士さんはすごいなと思います。見ていても気持ちがいいですよね」と賞賛していた。(取材・文・撮影:磯部正和)
映画『BLEACH』は全国公開中