ジャパン・カッツ賞を受賞!注目の映画『クシナ』監督らを直撃
ニューヨークのジャパン・ソサエティーで7月29日(日)まで開催されていたイベント「ジャパン・カッツ!」で、ジャパン・カッツ賞を受賞した注目の映画『クシナ』について、7月25日(現地時間)、速水萌巴監督、女優の廣田朋菜、撮影監督の村松良らがインタビューに応じた。
【作品写真】社会から孤立した女性のみの一族といえば…『ワンダーウーマン』も!
本作は、女性しか暮らせない村で生きる3世代の親子を描いたドラマ。深い山奥の村で暮らす28歳の鹿宮<カグウ>(廣田)は、母親で村長である鬼熊<オニクマ>(小野みゆき)と14歳の娘・奇稲<クシナ>(佐竹郁美)と共に、収穫した大麻を売って暮らしていた。ある日、村を訪れた人類学者の風野蒼子と助手の原田恵太を受け入れるが、これまで助けを求めてきた女性だけを受け入れてきた村が、男性の滞在を許可したことで、予期せぬ変化をもたらしていく。
今作は、完全に自身の脳内にあるファンタジーだと語る速水監督。自身と母親との関係を描こうと思い、キャラクターを作って動かしていくうちに、今作のシチュエーションになったそうだ。その自身が投影されたと思われる鹿宮<カグウ>を演じた廣田は、「思ったことをそのまま投影する、いわゆるリアルなものではなく、監督が思い描く想像の中のファンタジーという形なので、映像が今作のようになったり、設定が山の中になったり、女性主観になったりしています」と説明する。
山奥で暮らす女性という設定だけに、自然豊かな映像も魅力的だが、ロケーションについて撮影監督を務めた村松は、「山のシーンは山梨県の三ツ沢集落というところなんですが、Googleマップで調べても、なかなか出てこないような場所なんです。ただ、人がいないと電気もないので、それだと撮影はできません。廃墟を見つけることは簡単ですが、人の営みがあるようなところを探すのは困難でした。撮影に入るギリギリまで場所が見つからなかったので、その場でのリハーサルはできなかったですね」と振り返る。役者を入れてのリハーサルは少なかったそうだが、撮影の数か月前から速水監督や村松らスタッフが現場に行っていたことで、ロケ班を通してのカメラセッティングは速かったと廣田が明かし、チームワークの良さをうかがわせた。
女性だけが暮らす村で、女性たちを率いる村長である鬼熊<オニクマ>を演じた小野については、もともとはジブリ作品に出てくるような、もう少しふくよかなお母さんをイメージしていたという速水監督。「ですが、ネットなどでいろいろと調べているうちに、小野さんの写真にたどり着いて、『この人だ!』と思ったんです。ダメ元で事務所に連絡し、その日のうちに脚本を持っていくと、その日にOKの返事を頂いたんです。後日、直接ご本人にお会いし、改めて『強い女性だなぁ』と思いました」。その後、脚本も小野に合わせ変更していったそうだ。
今回、ジャパン・カッツ賞を受賞したが、海外の人に見てほしいと思う部分を聞くと「確実に文化が違う中で、どう思われるのかということに、個人的に興味を持っています」と廣田。一方、速水監督は「この映画は親子の関係を描こうと思って作った映画なので、映画祭に出すと、例えばフェミニストなのかとか、理想郷を描いているのかとか、思ってもみなかったリアクションが来ます。わたしはそういうつもりではなかったので、そういう言葉をいただき、考えなければいけないなと思いましたね」と答え締めくくった。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)