グレン・クローズ、アカデミー賞候補の呼び声高い話題の新作を語る
映画『危険な情事』やテレビシリーズ「ダメージ」などでおなじみのグレン・クローズが、新作『ザ・ワイフ(原題)/ The Wife』について、原作者メグ・ウォリッツァーと共に、8月17日(現地時間)、ニューヨークのパリス・シアターでの上映後Q&Aで語った。
本作は、作家の夫のノーベル文学賞授与をきっかけに、夫婦の意外な過去が明かされていく物語。ある朝、ジョー&ジョーン夫妻(ジョナサン・プライス、グレン)のもとに、ジョーのノーベル文学賞授与が決定したと吉報が届く。二人は作家志望の息子を連れ、スウェーデンに向かうが、道中、ジョーの伝記本を執筆する許可を得ようとする男ナサニエル(クリスチャン・スレイター)が同行し、夫婦の意外な過去が明かされていく。メグによる同名小説をビョーン・ルンゲ監督が映画化した。
グレン・クローズが主演したことについてメグは、「よく、原作者は『自分の書いた小説の主人公を、誰に演じてほしいのか?』と聞かれることがあるけれど、今までそんなことは考えたことがなかったの。ただ、グレンがキャストされたことを聞いて、彼女がこのジョーン役にしっくりくると思ったわ。踊りながら喜んだくらいよ」と明かした。
一方、グレンは、最初に脚本を読んだ後、原作は撮影に入るまで読まなかったそうだ。「脚本を読んだ感想は、『なぜジョーンは、ジョーと別れないのだろうか?』だったの。でも演じてみて、なんとなくその答えを見つけた気がするわ。それは、ジョーンもジョーの共犯だからなのよ」と二人の関係を語る。ジョーンも若い頃、執筆していたが、当時は女性の作品はほぼ出版されず、誰も女性作家を気にしていない時代。ジョーンはジョーを通して、読解力と執筆力の才能を発揮し、そんなジョーンの才能がジョーとの関係を脅かすことになるのだそうだ。
その若き日のジョーンを、グレンの実の娘、アニー・スタークが演じていることも話題だ。「自分の娘じゃなくても、成功を収めている女優の子供が、親と同じ道を選択することは、かなり困難な立ち位置にいることぐらいは理解できるわ。だから本当に素晴らしいことだと思うの。実際にアニーがこの役を手に入れて、考えて演じてくれたことに、わたし自身はとてもワクワクさせられたわ」。表現力豊かなアニーの表情は、母親譲りであることがうかがえる。
今作の演技はすでに高い評価を得ており、自身にとって7回目となるアカデミー賞ノミネートを獲得するのではと早くもうわさされ始めているグレン。このジョーンという役を演じられたことは、とても満足感のあるものだったそうだ。「過去の恋愛関係の中には、自分が無力に感じさせられた関係もあったわ。自分の主張がうまくできていなかったのね。でも、徐々に勇敢に主張できるようになっていったの。実生活では、なかなか言い出せないことを、映画を通してまるで実生活のように主張できるのよ」。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)