鬼才イーライ・ロス『ルイスと不思議の時計』でスピルバーグから「怖く作って」と注文
ジャック・ブラックとケイト・ブランシェットが共演した『ルイスと不思議の時計』は、スティーヴン・スピルバーグの製作会社アンブリン・エンターテインメントが手掛けたファンタジー映画だ。メガホンを取ったイーライ・ロス監督は、R指定ホラー映画の数々で知られる鬼才。「こういう映画をずっと作りたかった」という監督に、ロサンゼルスで話を聞いた。
子供の頃に観た『E.T.』や『グレムリン』といった“アンブリン映画”に大きな影響を受けたというロス監督にとって、本作は夢の企画。とはいえ、ジョン・ベレアーズの人気児童小説を人気ドラマ「SUPERNATURAL スーパーナチュラル」のクリエイター、エリック・クリプキが脚色した、子供も大人も楽しめるファミリー映画でもある。“怖さ”の表現を抑えなくてはいけなかったのではと尋ねると、「スティーヴン(・スピルバーグ)に怖く作ってと言われたんだ」と明かす。
劇中、両親を突然亡くした主人公の少年ルイスは、ジャック演じる叔父ジョナサンに引き取られる。実はジョナサンは魔法使いで、彼の住む屋敷は、そこらじゅう時計だらけ。楽しくも不気味な雰囲気が漂う。不気味な屋敷は、斬新なストップモーションアニメで知られるブラザーズ・クエイや、リドリー・スコット、テリー・ギリアム、ティム・バートン作品、さらに『ブレードランナー』のセバスチャンのラボなどにインスピレーションを受けたそうだ。
「ふとルイスの肩越しに、何かが動いていたりする。大きな屋敷の中で、夜に1人でそういうものを見るのはとても怖いものだ。子供はみんなそういう恐怖体験を持っているよね。家が、自分の家のように感じられない瞬間がある」
その言葉の通り、彼らがオートマトン(自動人形)に襲われるシーンなどは、ファミリー映画とわかっていても、とても恐ろしい。このシーンに登場する人形のいくつかは、スピルバーグ所有のものだそうだ。「スティーヴンが『僕もオートマトンのコレクションを持っているよ。子供たちが怖がるから、家には置いてないけどね』と言うんだよ。そこで、オートマトンのシーンに使わせてもらえないかって聞いたら、『本当に映画に出してくれるの?』って感じでさ」とイーライ。実際の撮影には専任のハンドラーが同席していたといい、壊れることのないよう、かなり気を遣ったそうだ。
初めてタッグを組んだジャックは「素晴らしい役者で、僕たちのロビン・ウィリアムズ」といい、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』も『ミセス・ダウト』もできる俳優と絶賛。また、オスカー女優でもあるケイトが、実はホラーファンだったことにも驚かされたといい、「サム・ライミの『死霊のはらわた』とか、1980年代のホラーが大好きなんだ。あのケイト・ブランシェットが僕と同じ好みを持っているなんて、信じられなかったよ」と笑みを浮かべた。(吉川優子)