キリスト教信仰をユーモラスに描いた22歳の新鋭監督、国際舞台で注目の的に
第3回マカオ国際映画祭(現地時間12月8日~14日)のラインナップがこのほど発表となり、奥山大史監督の初長編映画『僕はイエス様が嫌い』がコンペティション部門に選ばれたことが分かった。同作は9月にスペインで開催された第66回サンセバスチャン国際映画祭でニュー・ディレクターズ賞を受賞し、さらに18日まで開催中のスウェーデンの第29回ストックホルム国際映画祭でもコンペティションに選ばれている。日本期待の新人監督はすでに国際舞台で注目の的となっているようだ。
1990年にスタートしたストックホルム国際映画祭は新人発掘に定評がある。過去のブロンズ・ホース賞(最優秀作品賞)の受賞者は『ヨーロッパ』(1991)のラース・フォン・トリアー監督、クエンティン・タランティーノ監督は『レザボア・ドッグス』(1991)と『パルプ・フィクション』(1994)で二度、さらに最近ではトリアー監督の甥で知られるヨアキム・トリアー監督が『オスロ、8月31日』(2011、日本未公開)と『母の残像』(2015)で栄冠を得ている。
一方のマカオ国際映画祭は2016年に創設。第1回は矢口史靖監督『サバイバルファミリー』(2017)がコンペティション部門に選出されたが第2回から方針を変え、監督作1~2本の新人監督が対象。新興らしく審査員が豪華で、今年は『さらば、わが愛/覇王別姫(はおうべっき)』(1993)のチェン・カイコー監督を委員長に、『宋家の三姉妹』(1997)のメイベル・チャン監督、『ノー・マンズ・ランド』(2001)のダニス・タノヴィッチ監督らが務める。彼らから講評を得るだけでも大きな経験となるに違いない。
何より、かつてポルトガル領だったマカオはキリスト教の歴史的建造物が数多く残っており、信者も多い。ミッション系の学校に転校した少年が、信仰について考えていく成長物語をユーモラスに描いた『僕はイエス様が嫌い』がどのように受け止められるのか、注目度は高い。
そのほか第3回マカオ国際映画祭では、欧米の監督はアジア作品、アジアの監督は欧米作品の中からお気に入りの1本を選ぶディレクターズ・チョイス部門で、『ラスト・リベンジ』(2014)のポール・シュレイダー監督の選出で小津安二郎監督の『秋刀魚の味』(1962)が上映される。(取材・文:中山治美)
『僕はイエス様が嫌い』は2019年公開。また第19回東京フィルメックス(11月17日~25日)で招待上映される。