山田孝之が明かす仕事のルール
俳優だけでなく、アーティストでもあり、執筆活動も行い、先ごろミーアンドスターズ株式会社の取締役CIOに就任するなど、マルチな才能を発揮し続けている山田孝之。主演映画『ハード・コア』ではプロデューサーも兼ねている山田が、自身の独特な仕事術について秘訣を明かした。
人気コミックを実写化した『ハード・コア』だけでなく、過去にも『闇金ウシジマくん』シリーズや製作総指揮を務めた配信ドラマ「聖☆おにいさん」など、山田とコミックの縁は深い。だが、漫画を読んでいる時は「単純に漫画が好きで、面白いなぁとしか思っていない」という意外な答えが返ってきた。
「僕から発信することはあんまりありません。大枠は作れないんですけど、枠さえ投げてくれたら、ありとあらゆる案を考える」というスタイルだ。その際のルールは「無理と言わないこと。できないはないです。どうやったらできるかを考えます。無理と言うともったいない。ばかげていてもいい」といい、そういう発想は絶対に無駄じゃないと言いながら、山田は目の前の壁を見つめ「道具を一切、使わずにこの壁を壊せって言われたら、どうします?」とたずねた。誰もが「無理」と答えそうなところだが、山田は違う。「一人で無理だとして、何人集まったらいける? 百人だったらいけるかな。じゃあ、百人でタックルしてみよう。無理か。じゃあ、何人必要? 数の問題じゃないのかもしれない。今度は一列でいってみよう! そんな風に考えている時間、楽しいじゃないですか」と目を輝かせる。
『ハード・コア』で山田が演じている右近は思うまま、好きなように生きようとする人物で、山田曰く「多くの男性が憧れる」キャラクター。それは山田自身にも通じるところがある。本作で弟を演じた佐藤健をはじめ、山田を慕う後輩の実に多いこと。そればかりか時には初対面の人と酌み交わし、相談を受けることすらあるという、その懐の深さとキャパシティの広さは驚異的だ。だが、さらに意外なことに、これらの能力ももとからそうだったわけではなく、プロデューサー業をするようになって、身に付いたものなのだと明かす。「プロデューサーはどうすればみんなが納得するのか、どうしたら、みんなが喜んでくれるだろうかを考えて、調整しなきゃいけない。そうしていくうち、そうなっただけです」と自身で分析する。
「必要なものは必要な環境に応じて、身に付いていく」と語る山田は、俳優の表情の裏に実業家の顔が見え隠れする。最近はセルフプロデュースする俳優が当たり前のようになっているが、その先陣を切ったのが山田孝之と盟友の小栗旬だ。そして、その独走状態はこの先も続くのだろう。
「やりたいこと、やる意味があると思っていること、いろいろあります。でも、今後何をしようとしているかは言いません。言えたら、ただの予定じゃないですか(笑)。いずれどうせ出てくるので、『面白っ』と思ったら、楽しんでください」とにやり。どんなに忙しくても、どんなに無理そうでも、楽しんで仕事をこなす山田流仕事術。俳優でなくても、学べることがたくさんありそうだ。そんな山田が俳優兼プロデューサーとして参加した『ハード・コア』は、山田が面白いと思ったことが詰まった作品になっている。(取材・文:高山亜紀)
映画『ハード・コア』は全国公開中