『スター・ウォーズ』ハン・ソロ映画に抜てき!日本人アーティストの見えざる奮闘
映画『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフとして今年6月に公開された話題作『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』に参加したエフェクトアーティスト渡辺潤が、デジタルハリウッド大学の講義で来日した際、インタビューに応じ、制作の裏側を明かした。
【動画】『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』未公開シーン
渡辺は、アメリカ・ロサンゼルスを拠点に、フリーランサーとして『アントマン&ワスプ』『ジュラシック・ワールド/炎の王国』など数多くのハリウッド映画に参加。『ハン・ソロ』にも、ミレニアム・ファルコンの造形を担当したCGモデラー・成田昌隆などと並び、日本人クリエイターとして参加している。
シリーズ屈指の人気キャラクター、ハン・ソロの若き日の活躍を描く本作では、銀河のあらゆる場所を舞台に大冒険が展開。渡辺は、ハン・ソロがミレニアム・ファルコンで駆け抜けた危険宙域“ケッセル・ラン”のシーンを任された。この宙域でハンが打ちたてる最速記録は、シリーズを通じて、彼の武勇伝として語られる重要なパートだ。
このなかで5つのショットを任された渡辺。作業を通して、最も印象的だった箇所は、意外にもファルコン号ではなく、船を襲う巨大なモンスターの“よだれ”だったという。全ては、渡辺の仕事を観た視覚効果スーパーバイザーのロブ・ブレドウが発した「いい出来じゃないか。ところで、このモンスター、よだれが欲しいね」という言葉が発端。渡辺は「宇宙空間によだれなんて無いよ!」と思いつつ、まずは舌の下によだれの糸を約30本加えた。しかしロブからは「前歯にも欲しい」「量はこの10倍くらい」「2~3本、途中で切れているといい」と追加注文が入り、終わらない戦いを繰り広げることに。「1~2秒のシーンだったが、よだれの完成までに2週間かかった」
作り出す映像に反して、繊細で根気強い作業が求められる渡辺の仕事。長い時間をかけて作り上げたシーンが、作業工程で全く見えなくなることもある。しかし、自分の仕事を料理に例えた渡辺は、「一皿を1人で作るわけじゃなくて、それぞれの丹精を込めた品が一皿に入っているんですよね。食べたときにどれかが強くてもダメで、バランスが大事です」と語った。
近年はVFXの分野における日本人の活躍もより話題に上るようになった。将来のVFX アーティストやCGクリエイターを目指す学生に向けて渡辺はこう語っている。「映画作りで何より大切なのは、ストーリーテリング。アーティストとして『こんなことがやってみたい』というアイデアが浮かぶこともありますが、何よりも監督や観客が求めるものを作ることが大切です。私たちの仕事は、ある種のパフォーマーであり表現者。技術はもちろんですが、日頃のインプットや観察力が重要です。私も焼き鳥屋で飲んでいると(笑)、ビールの泡や、ダクトに吸い込まれる煙をずっと見ていますね」(編集部・入倉功一)
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